治療不可能な恋をした
その穏やかな空気の中、理人は優しい声で尋ねる。
「昨日はどうだった? 楽しかった?」
梨乃は視線を理人の方に向け、スプーンを置きながらゆっくりと頷く。
「うん。元気そうだったし、全然変わってなかった。久しぶりに話せて懐かしかった」
その言葉に、梨乃の無防備にふんわりと緩んだ表情が目に映った。いつもどおり愛おしい──けれど、同時に理人の胸の奥には違和感が芽生えていた。
(梨乃が心許してる幼馴染、か……)
ほんの少しだけ混じる嫉妬心に、理人は自分でも驚いた。けれど、それ以上にその存在が気になって仕方がなかった。
「幼馴染って言ったっけ。どんな子?」
「ん?どんなって?」
「写真とかないの?」
そう尋ねると梨乃は、思い出したようにスマホを手に取る。
「あるよ。絵麻さん……向こうのお母さんが撮ってくれたやつだけど」
その言葉に理人は心の中で少しざわついた。
(向こうの……お母さん?)
初めて耳にする情報に戸惑いながらも、画面に映し出された集合写真を見つめる。
そこには梨乃と母親たちらしき女性が二人、そして見知らぬ男が一人、並んでテーブルを囲んでいる姿があった。
理人の視界が一瞬白くぼやける。
(……は?男……?)
声に出せない疑問を抱えたまま視線を上げると、梨乃は変わらぬ穏やかな表情で首をかしげていた。