治療不可能な恋をした
「逢坂くん、昔から友達とか、男女混ざって飲みに行ったりしてたし……そういうの、普通のことだと思ってて……」
理人はその赤い目を見逃さなかった。胸の奥に何かが引っかかり、もどかしさが膨れ上がる。
「絢斗はただの幼馴染なの。母親同士が親友だから交流があるだけで、本当にただの兄妹みたいな関係で……っ、向こうもずっと彼女いるし、恋愛対象に見たことなんて一度もないの!」
梨乃の必死の言葉は届くが、理人の焦燥を抑えるには足りなかった。
(絢斗、ね……)
──その名前を呼び捨てにされるのが、どうしようもなく腹立たしく、心に刺さった。
理人はゆっくり立ち上がる。向かい合うと、梨乃の瞳にかすかに浮かぶ涙を見て胸を締めつけられる。
「……そういう問題じゃねぇんだよ」
そう言った声は怒鳴るわけでもなく、ただ本気の嫉妬に揺れていた。
「お前がそいつを男として見てなかったとしても……こっちは、そうやって“近くにいる男”が一番怖いんだよ」
抑えきれない焦りが、にじむように声へと滲み出る。
「昔から近くにいたってだけで十分なんだよ。俺の知らない時間を、そいつはずっとお前のそばにいたんだろ」
胸の中の感情を押し殺しながら、理人は言葉を重ねる。
「ただの友達? 親も仲良し? 兄妹みたい?──だから何だよ」
その声は周囲の空気すら歪むほど強く響いた。
「俺は……今やっと、お前の隣にいられるようになったばっかなんだよ。その前に当然の顔してそこにいた男がいたってだけで、ムカつくんだよ」
理人の言葉は冷静さを失いながらも、本心からの叫びだった。