治療不可能な恋をした
しかし、絢斗はそんな空気にまるで気づく様子もなく、朗らかな声でパッと話題を広げる。
「ははっ!まあ仲がいいって言えばそうかもですね。いやあ〜、でも本当にビックリしたよ」
理人の牽制など微塵も届かないかのように、屈託のない明るさが場をさらりと上書きしていった。
「梨乃は昔からすげえ真面目で、手を抜くってことを知らなくて、いつも肩肘はってるようなやつで」
ピクリと、理人の口元がわずかに歪む。
(はあ?幼馴染マウントかよ)
心の中でそう思い、微かに表情に苛立ちが現れる。
けれど絢斗は全く気にする素振りなく、梨乃をちらりと見ながら明るく続けた。
「まさかそんな、真面目一辺倒の梨乃に彼氏──しかもそれが同じ職場だって聞いたときは、意外すぎて腰抜かしたよ。梨乃に限って公私混同、しかもこんな超男前なんて!お前、なかなかやるじゃん〜」
ケラケラと笑い声を上げる絢斗に、梨乃は頬を赤く染め、小さな声で嗜める。
「ちょっと!声大きいから!」
理人は軽く驚きつつも、目の端で梨乃を確認する。彼女は頬を赤く染め、絢斗を睨んでいる。
狼狽を隠しきれない彼女を前に、言葉を選びながらゆっくり口を開く。
「……俺のこと……彼氏って、話してたのか?」
声は冷静に保とうとするが、それでもわずかに動揺が滲んでいた。
梨乃は一瞬理人の視線を受け止めるように顔を上げ、小さくうなずくだけで、それからは視線を伏せた。