治療不可能な恋をした
「逢坂先生は心臓外科でしたよね。すごいなぁ。今後そちらにもお邪魔することもあると思うので、その時はぜひよろしくお願いしますね!」
絢斗はそんなどこかぎこちない雰囲気をよそに、にこやかに笑いながら会話を続けた。
「あ、そうそう。この前の新薬の説明会で心臓外科の症例を見て、ちょっと感動しちゃったんですよ〜。現場で活躍されてる方のお話は説得力がありますね。いやあ、すごいです、本当に!あ、もし今後こちらで使うことがあれば、僕も直接サポートさせてもらいますので、気軽に声かけてくださいね。先生の仕事の邪魔にならないようにしますから!」
「……。はあ……」
止まらない絢斗のマシンガントークに、拍子抜けした気分になった。そのあっけらかんとした明るさに、張り詰めていたものがしだいに解けていく。
隣では梨乃が軽く呆れた顔をし、額を手で押さえながら小さく言った。
「絢斗……初対面でいきなり喋りすぎだよ……逢坂先生、ちょっと引いてるよ」
「あ、マジ?ははっ、ごめんごめん!ただこれは職業病っていうかさあ。あ、そういう病気ってここで治せます?いやそもそも病気じゃねえか!それに、さすがの俺もワーカーホリックに効く薬は知らないなあ。あはは!」
笑い声を交えつつ、軽やかで人懐こい言葉遣い。純粋に話すことのが好きなんだと伝わるような自然なトークと親しみやすい笑顔に、毒気が抜けていく。
理人に対する押し付けがましさや敵意もなく、場を明るく保つ社交的な雰囲気だけが漂う。
そこには梨乃へ特別な感情を抱いている様子もない。ただ、場を和ませる友好的な空気があるだけだった。