治療不可能な恋をした
梨乃は手を止め、フォークを持ったまま理人を見た。
「後輩を指導するってなると……やっぱり今より忙しくなるよな?」
「えっと……しばらくはそうだね。でも、来月には落ち着くんじゃないかな。夏のピークが過ぎれば、忙しさも和らぐと思う」
「そっか……」
理人はふとフォークを置き、グラスに手を伸ばして水をひと口含む。何かを考えるような表情のあと、まっすぐに梨乃を見つめてきた。
「じゃあ、その頃なら少し時間に余裕もできそうだな」
「え?」
「実はさ、さっき梨乃を待ってる時に大学の奴らから連絡がきて、集まれる奴らで同窓会やらないかって誘われたんだ」
「そうなの?」
梨乃は思わず目を瞬かせ、きょとんとした顔で見返す。相変わらず人気者だな、と心の中でそうつぶやいた瞬間、理人が続けざまに声をかけてきた
「それで、梨乃が嫌じゃなければ、一緒に行かないか」
理人の唐突な誘いに、梨乃は思わず目を開いた。そしてゆっくり、口元に手を運ぶ。
「私も、一緒に……?」
口の中で繰り返しながら、心がわずかに揺れる。
大学時代、理人とは同じ講義や実習で顔を合わせる程度で、特別深く交流があったわけではない。
だから、彼の友人たちの輪に自分が踏み込んでもいいのだろうか──胸の奥に小さな不安が芽生えた。