治療不可能な恋をした

「……でも、理人の友達の集まりでしょ?私なんかが一緒に行ったら、迷惑じゃないかな」

視線をテーブルに落としながらつぶやく。理人は少し肩を揺らして笑った。

「何言ってるんだよ。梨乃だって俺たちの同期だろ。それに、俺がお前と一緒に行きたいと思ってるんだ」

一呼吸置き、視線を少し柔らかくして続ける。

「……なにより、同窓会で、俺たちが付き合ってるってこと、ちゃんとみんなに伝えたいんだ」

その言葉に、胸のざわめきが少しずつほどけていく。理人の声は穏やかで、でも揺るぎない強さがあった。

「理人……」

「梨乃がこういう飲み会が好きじゃないのは分かってる。でも……これから梨乃との約束や時間を大事にするためにも、そうさせてほしい」

しばらく言葉を飲み込み、梨乃はゆっくりと顔を上げる。理人の穏やかな笑みに視線を合わせると、胸の奥にあったざわめきが、少しずつ解けていくような感覚があった。

「……そっか。じゃあ……行ってみようかな」

言い終えると、ほんの少し肩の力が抜けたような安堵の笑みがこぼれる。理人の表情にも、ほっとした色が広がった。

「決まりだな。楽しみがひとつ増えた」

梨乃は小さく笑みを浮かべながら、胸の奥に生まれた期待と緊張を噛みしめた。小さな不安はまだ残っているのに、その向こう側で膨らんでいく楽しみの感覚に、そっと心が揺れていた。



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