治療不可能な恋をした
「片想い……?」
梨乃の小さな声は、賑やかなテーブルの中でぽつんと浮いた。自分一人だけが、全く会話の意味が見えていないようだった。
「えっ、やだウソ。もしかして仁科さん、知らない感じ?」
「知らないって……なにを?」
向かいの女子が信じられないといった表情で目を丸くする。そのまま大げさにため息をつき、額に手を当てた。
「あっきれた。ほんと理人ってば、全然変わってないんだね」
「え?」
「仁科さん。これ、私達が言うのも変な話なんだけどさ──理人って、学生の頃からずっと仁科さんのことすきだったんだよ」
「……っ、ええ!?」
梨乃の脳裏で何かが弾けたように真っ白になる。
冗談だと笑う人はひとりもいない。むしろ「そうそう」と頷いたり、「よく言った」という顔で笑ったり。まさに誰もが知っていた秘密を、梨乃だけが知らされていなかったかのようだった。
一方の理人は、気まずそうに頬をかきながらも苦笑いを浮かべていた。
「……いや、まあ……自分の気持ちにちゃんと気付いたのが卒業式の時でさ。なんか俺だけ気付いてなかったのがダサすぎて、言いにくくて……」
「いやいやいや!それ一番大事でしょ!」
「だから何年も片想い拗らせんのよ!ちょっとは学びなよ!」
女性陣から一斉に、理人へ大ブーイングが浴びせられる。