治療不可能な恋をした
「まあまあ、そんな責めなくても」
「俺らは逢坂の気持ち、分からなくはないよ」
男子たちは苦笑しながら理人を庇う。男同士にはどこか共感するものがあるらしく、「逆に逢坂らしいじゃん」と肩をすくめる姿もあった。
色々な声が飛び交う中、梨乃は気づけば頬がじんわりと熱を帯びていた。
学生の頃から好きでいてくれた。──その事実は、恥ずかしさよりも胸の奥を温かくする。
(じゃあ、あの卒業式の夜も……ううん、それより前から、ずっと?)
散々茶化され恥ずかしいはずなのに、不思議と嫌じゃなかった。むしろ、じんわりと嬉しさが広がっていく。
「ったく、うるせえな……」
とうとう痺れを切らしたように、理人が息を吐くように漏らす。
そして隣に座る梨乃の背中にそっと手を添えると、ぼそりと小さく吐き出した。
「……ビビるくらい本気で好きになったの、梨乃が初めてだったんだよ」
その声音は、周囲に向けたものというより、梨乃にだけ届くような低さだった。梨乃の胸は一気に跳ね上がり、耳まで真っ赤になる。
「え、なになに?仁科さん顔あか!」
「理人〜、仁科さんになに言ったの?」
周りが問い詰めるが、理人は一瞥して鼻を鳴らした。
「お前らに聞かせることじゃない」
その一言で場が再び湧き、「うわーうっざ!」「なんか急に調子乗ってんですけどぉ!」と笑いと歓声が飛び交う。
「──はいはい!とりあえず詳しい話は後!まずは再会に乾杯しようぜ!」
そのひと言でグラスが次々に掲げられ、和食バルの空気は一気に乾杯ムードへと切り替わっていった。