治療不可能な恋をした
女子たちの懐かしい話は尽きることなく、弾む声と笑いが絶え間なく続いていた。
料理を取り分ける音やグラスのぶつかる軽やかな音が混じり合い、会場は和やかな熱気に包まれている。
梨乃は笑顔を向けられるたびに曖昧に頷き、必死に言葉を探していたが、矢継ぎ早に浴びせられる質問にうまく答えられず、次第に頬が赤くなっていくのを感じていた。
そんなとき、ふと気配が動いた。
近くで黙っていたはずの理人が椅子を押して立ち上がり、そして低く落ち着いた声が輪の中へ落ちてきた。
「……お前ら、余計なことばっか言ってないで、いい加減返せ」
その言葉に彼女たちは不満げな顔を見せ、わざとらしく大袈裟に息を吐いた。
「あーはいはい、お早いお迎えだこと」
「束縛する男は嫌われるよ?」
からかうように口々に放たれる声に、理人は短く「うるせ」とだけ返す。その声音には、苛立ちよりも照れが混じっているような気がした。
理人は少し顔をしかめながらも、そっと手を伸ばす。ためらいのない仕草で梨乃の手に触れ、軽く握り込む。
不意に伝わった体温に、梨乃の心臓が跳ね上がった。
周囲の笑い声や会話が、急に遠ざかる。意識のすべてが、その温もりと彼の視線に釘付けになってしまう。
そして次に聞こえてきた言葉は、意外なほど弱さをにじませていた。
「……いろいろ言われてたけど……幻滅、してないか?」
低く抑えた声に、梨乃の胸がぎゅっと締めつけられる。普段なら絶対に見せない、不安を含んだ声の色。