治療不可能な恋をした
「んじゃ、またな」
そのまま黒川をはじめとする同期たちと別れ、梨乃は理人と並んで夜の街を歩き出した。
街灯に照らされる歩道には、夏の夜らしい湿り気が漂い、少しだけ酔いを含んだ空気が肌に心地よく触れていく。
「どうだった?初めての同窓会」
理人が横を歩きながら、ふいに話しかけてきた。
梨乃は一瞬考えて、くすりと小さく笑う。
「楽しかったよ。最初は緊張したけど……理人が一緒にいてくれたし、みんなも優しかったし。こんなに気持ちよく酔えた飲み会は、初めてかも」
「そっか。梨乃が楽しめたならよかった」
理人は少し肩の力を抜いたように笑ったが、すぐに眉をひそめる。
「というか、あいつら人を見世物みたいに揶揄いやがって……ごめんな?嫌な気分にならなかったか?」
思わぬ気遣いに、梨乃は目を瞬かせる。
「全然だよ。そりゃあ……馴れ初めを詳しくって聞かれた時はちょっと困ったけど」
「あー……それはごめん」
「?どうして理人が謝るの?」
「いや……だって俺、ちゃんとお前に好きだって言う前に手ぇ出したわけだし……情けないというか、バツが悪いというか」
「何言ってるの。そんなの私だって同じだよ。ずっと自分の気持ちを見ないように逃げてたし、理人が告白してくれた後だって……ちゃんとすぐ向き合えなかった。私こそ、ごめんなさい」