治療不可能な恋をした
言い切って、梨乃は小さく息をつく。
あの頃は、理人の隣に立てる資格も理由もないと思っていた。けれど今は、周りの人の言葉や、理人自身が言ってくれた変わらない気持ちが、少しずつ自信を持たせてくれている。
梨乃の言葉に、理人は歩きながらも、ほんのり照れたように目を細めた。
「……俺達二人とも、恋愛下手すぎるな」
その一言に、梨乃の胸が甘く揺れる。会話が途切れると、街のざわめきと足音だけが響いた。
「……」
理人の手に触れたい衝動を抑えながら、梨乃は何度も言葉を飲み込み、唇を噛む。
(恥ずかしい……でも、いま言わなきゃ)
赤くなった頬を隠すように俯き、ようやく小さな声で切り出した。
「……あの、理人」
言葉に詰まり、何度も言い淀む。理人はそんな梨乃を静かに見つめ、微笑みながら黙って待っていてくれる。
その優しさに、胸の奥がきゅう、と締め付けられる。
「その……あの、ね」
少しだけ息を整え、震える声で続けた。
「……私、今日は………もうちょっと理人と、いたいんだけど……だめ?」
言った瞬間、頬がさらに熱くなるのを感じた。夜風が当たっても冷める気配はなく、鼓動ばかりが速くなる。
隣を歩く理人は、ぴたりと足を止めた。何も返してくれない沈黙に、梨乃の心臓がひゅっと縮む。
(……い、言わなきゃよかったかも……)
しかしそう思った途端に手を取られ、強く引き寄せられる。あっという間に理人の胸に抱き込まれ、梨乃は小さく声を漏らした。
顔を上げると、真剣な瞳の奥に、隠しきれない喜びが滲んでいる。その表情に、体じゅうがじんわりと熱を帯びていく。