治療不可能な恋をした
──部屋の扉が閉まった瞬間、心臓の音がやけに大きく響いて聞こえた。
初めて足を踏み入れたラブホテルの空間は、思った以上に落ち着いていて静かだったのに、その静けさがかえって緊張を煽る。
(ど、どうすれば……)
どこに視線を置けばいいのかも分からず、ただ扉の前で立ち尽くし、息を詰めたまま動けずにいた。
「梨乃」
名を呼ぶ低い声に反応するより早く、理人の手が頬に添えられる。そのまま引き寄せられ、深く、ためらいのない口づけが落ちてきた。
「ん……っ」
声にならない吐息がもれる。息継ぎの隙すら与えられないほどの熱に抗うこともできず、ただ胸の奥が甘く痺れていく。
理人の唇はやがて頬から耳、首筋へと這うように降りていった。
「……っ、ふ、ぅ……」
熱を帯びた吐息がこぼれる。止める言葉を紡ぐ前に、理人の口づけが鎖骨をかすめ、さらに胸元へと落ちていく。
シャツの襟元をわずかに掻き分け、理人の唇が強く吸いついた。じわりとした熱が刻まれる感覚に、梨乃は思わず肩を震わせる。
「や……そんなとこ、つけないで……」
かすれた声は最後まで言い切れず、代わりに赤く火照った吐息だけが漏れる。
頬を染めて抗えずにいる梨乃を抱き締めたまま、理人は喉奥で小さく笑った。
「梨乃が煽ったんだから、我慢して」
低く囁きながら、そのまま梨乃を軽々と抱き上げる。足が宙に浮く感覚に思わず腕を回し、体にしがみつく。視線を泳がせているうちに、部屋の奥へと運ばれていった。
次の瞬間、柔らかな感触が背中を受け止め、ベッドに沈み込む。
覆いかぶさってきた理人の体温が、間近に迫っていた。