治療不可能な恋をした

その日の夜、改めて話し合い、二人で同棲することを決めた。

まだ現実味は薄いけれど、理人と同じ場所で暮らし、同じ時間を積み重ねていく未来を思うと、自然と頬が緩んでしまう。

その話し合いの中で、理人がさらりと口にした。

「実家出るなら、ご両親にひとこと挨拶あるのが礼儀だろ」

思わず固まった。今もまだ実家暮らしを続けている自分にとって、その提案はもっともだった。頭では理解できる。けれど、親に理人を紹介するという現実に、緊張が走った。


──そうして迎えた二人の休みが重なった休日。

梨乃は理人と共に、実家の玄関を目指すことになった。





靴音が近づくたびに、胸の奥が妙に落ち着かなくなる。玄関の前に立ち止まった梨乃は、無意識に指先をぎゅっと握りしめていた。

隣に立つ理人は、いつもと変わらない落ち着いた表情をしている。その横顔を見て、梨乃は小さく息を整えた。

「……押すよ?」

「おう」

理人の返事に背を押されるように、梨乃は玄関のチャイムを押す。

「はあい」

すぐにドアが開き、母が顔を覗かせた。玄関先で梨乃と並ぶ理人を見上げ、「いらっしゃい」とふわりと優しい笑みを浮かべる。

その笑顔に、梨乃は少しほっとした。

「初めまして。梨乃さんとお付き合いさせていただいている、逢坂理人と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」

理人が深々と頭を下げ、落ち着いた声で挨拶する。その誠実な所作に、梨乃の胸の鼓動はかえって速くなる。


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