治療不可能な恋をした
母がお茶を淹れ、理人の手土産を小皿に移してテーブルへ並べる。緊張で背筋を固くしている梨乃の隣で、理人は穏やかな笑みを保っていた。
「娘からお話は聞いてます。梨乃ったら、最近出かけるたびにすごく楽しそうで……とても大切にしてもらえてるんだなって伝わってきて、嬉しく思っていたんです」
「!ちょ、お母さん…!」
熱で顔がほてり、隣の理人からの視線に耐えられず、思わず言葉が詰まった。
「だから今日、理人さんにお会いできると聞いて、私も主人もとても楽しみにしていたんです」
母の言葉に理人は穏やかに微笑み、落ち着いた声で答えた。
「ありがとうございます。僕としては自分のしたい事を梨乃さんにしていただけなんですが……そう言っていただけると、すごく安心します」
その誠実な言葉に、母は一瞬目を見開いたが、すぐにほっとしたようにくすりと笑った。
その様子を見守っていた父も、にこりと口元を緩める。
「理人さんは、梨乃と同じ大学病院の外科でしたよね。私も昔は大学病院にいたので、大変さはよく分かります」
湊はそう言い、懐かしそうに目を細めた。
「はい。まだまだ当直や手術の連続で、不規則な生活が続く毎日です」
理人も落ち着いた声で頷き、真剣な眼差しを父に向ける。
「そうでしょう。私も大学病院の頃は本当に時間も自由もなくてね。勤めていたのは妻に出会う前でしたが、誰かと落ち着いて過ごす余裕はあまりなかったです」