治療不可能な恋をした
その様子にさらに真っ赤になった梨乃が戸惑っていると、奥の方からぱたぱたと軽快な足音が響いてきた。
「ちょっとおかあさーん?いつまで外で話してんの?」
声と同時に、玄関の奥から姿を現したのは背の高い若い女性だった。理人と同じくすらりとした体格に、ぱっと目を引く整った顔立ち。けれど大きな瞳に浮かぶ表情はどこか人懐っこく、彼とは違う華やかさを纏っている。
「兄貴が彼女連れてくるって、奥でお父さんずっとそわそわしてんだから!二人も疲れてるだろうし、早く中に入れてあげなよ」
にかっと笑うその様子に、理人はわずかに眉をひそめた。
「……茉里、なんでお前までいるんだよ。就職で家出たはずだろ?」
「えー、いいじゃん別に。私だって彼女さんに会いたかったんだもん〜」
頬をふくらませて悪びれる様子もなく言うと、茉里と呼ばれた女性はすっと梨乃の前に歩み出た。
「梨乃さんですよね?会えて嬉しいです。私、理人の妹の茉里です!」
遠慮のない元気な声で手を握られ、梨乃は一瞬きょとんとしたあと、慌てて小さく笑った。
「初めまして。仁科梨乃です。よろしくお願いします」
その控えめな挨拶に、茉里は「わあ、笑うと可愛い〜!」と無邪気に声を弾ませ、空気がぱっと和やかに変わっていった。