治療不可能な恋をした
家族との食事を終え、後片付けも手伝いながらしばし談笑を交わしたあと、西日が強くなる頃にはそろそろ帰る時間となった。
「帰り道は気をつけてね」
「またいつでもいらっしゃい」
和やかに送り出され、梨乃と理人は並んで玄関に立つ。
「今日はお食事までご馳走になって、本当にありがとうございました」
靴を履き、丁寧に会釈をして改めて挨拶を交わし、理人の両親とはそこで別れた。
「梨乃さ〜ん」
だが茉里だけは名残惜しそうに梨乃の腕を掴んで外までついてきた。
「私、普段は都内に住んでるので、今度カフェ巡りしましょうよ〜。おすすめのお店、いっぱいあるんです」
すらりと背が高く大人びた雰囲気があるのに、甘えるような無邪気さは年の離れた妹らしく、梨乃にはそのギャップが可愛らしく映る。
「茉里、お前なぁ……梨乃は忙しいんだから、あんまり無理に誘うなよ」
けれどすかさず理人が横から口を挟み、茉里は不満げに兄を睨む。
「はー? そっちは同棲していつでも一緒にいられるんだから別にいいでしょ? ケチかよ」
「いや、それとこれとは別だろ」
「心狭すぎ、余裕なさすぎ。超ウケる」
楽しげにやり合う兄妹の言い合いに、梨乃は思わずくすりと笑いをこぼした。
やがて理人は当然のように助手席側へ回り、ドアを開けて梨乃を手で促す。その自然な仕草に、少し照れくささを覚えながら茉里へ向き直り、「今日はありがとう。またね」とお礼を伝えようとした──その時。
ガレージの外から影が差し込み、空気がひやりと変わった。