治療不可能な恋をした
『兄貴!梨乃さんは!?』
受話口から飛び出した焦り混じりの声に、理人はわずかに表情を緩める。それまでの険しさがほどけ、苦笑を浮かべながら答えた。
「今、全部話したところだ」
『そっか……』
しばしの沈黙のあと、茉里の声が再び届く。少し息を整えながら、申し訳なさを含めて続けた。
『ごめん、兄さん……。私、菜々美がこっちにいたなんて全然知らなくて……高校で学校別れて以来、交流なんて全然なかったから……』
「なんでお前が謝るんだよ」
『でも……。あの、梨乃さんも私の声、聞こえてますか?』
茉里からの問いかけに、梨乃は声を出して応えた。
「うん。聞いてるよ」
ぎこちなく笑みを浮かべる梨乃の声を聞き、茉里はわずかに緊張がほぐれた様子で続ける。
『あの、私の同級生がごめんなさい!兄と菜々美は本当に何もありません!私が保証します!なんていうか、あの子昔から色々ぶっ飛んでて……不安になりますよね?ほんと、ごめんなさい!』
「茉里ちゃん、謝らないで。大丈夫だよ」
茉里の声には、罪悪感と焦燥が滲んでいた。
そして真剣な声で、理人に向かって「兄さん」と呼びかける。
『お母さん達にも、菜々美のことは話しておいた。出来るだけ周りに兄さんのことは話さないよう言ったけど……正直、兄さんは有名人だから、どこからどう情報が漏れるか分からない』
「………」
『力になれなくて、ほんとにごめん』
「……いや……」