治療不可能な恋をした

やがて理人が、ふっと口角を上げて顔を上げた。胸元から見上げてくる瞳には、もう眠気だけじゃない色が浮かんでいた。

「……なに?」

おどけるように笑う声が低く響き、梨乃の心臓は跳ね上がる。

「なに、じゃなくて……!ど、どこ触って……」

必死に言い募る梨乃に、理人は楽しげに目を細める。

「梨乃の胸。柔らかくてすげえ気持ちいいよ」

悪びれもなく告げる声音に、顔が一気に熱を帯びた。

「そ、そういうことを言ってるんじゃない!」

「真っ赤になって怒られても説得力ねえよ」

茶化すような口ぶりに、余計に言葉を失う。梨乃が「いい加減に起きないと仕事遅れるよ!」と声を荒げると、理人は大きく息をつきながら布団に沈んだまま呟いた。

「……そうだよなあ……行かねえとだよなぁ……」

わざとらしく間延びした声。そのまま頬をすり寄せて、にやりと笑う。

「……じゃあ、布団出る前にキスしてよ」

甘え半分、わがまま半分の声音に、梨乃は絶句する。

「へ……?」

「今日一日も頑張れるように、梨乃が俺にやる気出させて」
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