治療不可能な恋をした

「……理人……」

肩を借り、胸に顔を埋める。言葉はどうしても出てこず、ただ震える体を預けるしかなかった。

「梨乃、まさか……あの女に何かされたのか」

力なく寄りかかり、胸に顔を埋める。言葉はどうしても出てこず、心の奥でこみ上げる不安と恐怖が、涙とともにあふれそうになる。

「今夜……一緒にいてほしいの。……お願い……」

理人は一瞬言葉を詰まらせたあと、そっと肩を優しく抱き寄せ、静かに言った。

「……分かった」

梨乃の話せない様子を察し、しつこくは尋ねないでいてくれた。理人のその気遣いに、胸の奥の緊張がわずかに和らぐ。

「ちょっと待っててくれ。すぐに戻る」

梨乃はうなずき、名残惜しさと不安を胸に抱えながら近くのベンチに座った。

そのとき、スマートフォンが震え、非通知番号からの着信が表示される。迷わず応答拒否を押して切る。しかし電話はしつこく鳴り、何度目かのとき、うっかり応答ボタンを押してしまった。

『……りのちゃん、だよね…?』

息の荒い、全く知らない男の声に、梨乃の体は凍りついた。心臓が跳ね上がり、冷たい汗が背中を伝う。

『今夜ヌいてくれるって、ほんと?』

言葉の向こうに漂う卑猥さに思わず身を硬直させ、全身ががゾッと震えた。

「ひっ…!」

動悸が一気に早まり、咄嗟にスマホを投げ捨て、ぶるぶると震える。

(理人…!お願い、はやく来て…!)

涙をこらえきれずに流しながら、耳を塞ぎ、ベンチの上で体をぎゅっと丸める。目を強く閉じ、外の音も視界も遮断するようにして、恐怖と不安が少しでも遠ざかるのを必死に願った。
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