治療不可能な恋をした
「誰がやったかなんて関係ねえ。お前にこんな思いさせたやつ全員を、俺は絶対に許さない」
はっきりと言い切る声に、梨乃の涙はさらにあふれる。理人は濡れた頬を親指で拭いながら、視線を逸らさず続けた。
「すぐに気付いてやれなくてごめん。けど、お前はもう一人で怯えるな。俺がいる。……絶対に、俺がなんとかするから」
力強いその言葉が、壊れそうな心を支える杭のように胸に打ち込まれ、梨乃は嗚咽混じりに頷いた。
理人はそっと髪を撫で、落ち着いた声で続ける。
「まずスマホの番号を変えよう。今のままだと相手の思うつぼだし、さっきの電話……考えるのも嫌だろうが、おそらくそういったサイトに情報を勝手に流されてる可能性が高い」
「……うん……」
「それと、病院にも報告する。ロッカーの件は廊下の防犯カメラを確認すれば分かるはずだ。絶対に放置しない」
一つひとつ現実的な対策を口にする理人の声に、梨乃の肩から少しずつ力が抜けていく。
「それから……」と理人は言葉を区切り、彼女を強く抱き寄せた。
「梨乃は今日から家に一緒に住め。新居への入居は週末だったが、お前を一人にしたくないし、いつでも守ってやれる場所にいてほしい」
「……理人……」
理人の決意がにじむ言葉に、梨乃の胸は新たな涙でいっぱいになった。けれど今度は、不安ではなく温かな感情が混じり合った涙だった。
「……ありがとう、理人……」
震える声でそう告げようとした、その瞬間だった。
──無機質な着信音が室内に響く。