治療不可能な恋をした
二人はお互いの腰に手を回したまま、距離を少し詰めて見つめ合う。体を寄せて彼を見上げると、理人の手がそっと梨乃の頬に触れ、指先で優しく撫でた。
「梨乃がそう言ってくれるなら……けど、今度からは俺に送るように言っとくよ。本当に大事なときだけ、相手してくれるだけでいいから」
「うん。ありがとう」
手をつないだまま短い沈黙を楽しんだ後、梨乃がそっと手を離しながら立ち上がる。
「じゃあ私、夕食の準備してくるね。冷蔵してあったものをチンするくらいだけど」
「ん、助かる。ありがとな」
梨乃は軽くうなずき、キッチンへ向かう。キッチンのカウンターに立ち冷蔵庫に手を伸ばしたところで、床のスーツケースに目を落とした理人が声をかけてくる。
「学会の準備してたのか。もう終わったのか?」
「うん、ほとんどね。あとは細々したものくらいかな。書類とか、ちょっとした資料の整理だけ」
「じゃあ俺も、ちょっとだけ進めておこうかな」
理人の声を聞きながら、梨乃は電子レンジに冷蔵の惣菜やご飯をセットする。温まるまでの間にお盆に他の料理を並べ、器を慎重に置きながらテーブルへ運んだ。