治療不可能な恋をした

「それにしても、随分起きるの遅かったね。そんなに仕事忙しいの?」

「忙しいは忙しいけど……昨日は仕事の後飲み会があったから、それに参加してたんだよ」

「ええ?珍しいね、梨乃が飲み会に出るなんて」

「昨日は参加せざるを得なかったんだよ」

参加理由を言うと、愛梨はなるほどね〜と言いながら軽く笑った。

「……」

ペットボトルの蓋を開けながら、改めて視線を姉に向ける。

(相変わらず、綺麗なひと……)

愛梨は昔から、いつどこにいても目を引く人だった。

明るい髪も肌も、ナチュラルなのにどこか華やかで、人を惹きつける魅力がある。35歳で、一児の母。そう聞けば誰もが驚くくらい、若々しく美しい。

自分とは、ぜんぜん似ていない。

同じ両親から生まれたはずなのに、姉の美しさは父譲りで、梨乃自身はどちらかというと控えめで目立たない方だと思っている。

何事も要領よくこなせて、いつでも自然体で、気づけば人の輪の中心にいて。姉のその“完璧さ”に、梨乃は昔から憧れとコンプレックスを同時に抱いてきた。

(……そういうところ、逢坂くんとすこし似てるかも)

そう思った瞬間、胸の奥に何かが触れた。

社交的で、気配りができて、空気を読まずともその場に溶け込める。自分には持てないものを、当たり前のように持っている人。

昨日の夜のことが、また胸の奥でざらりと疼く。

口にすることもできず、指先に少しだけ力が入った。
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