治療不可能な恋をした

「……なに?」

ふいに、愛梨が不思議そうに眉を上げた。

「さっきからじっと見てるけど、私の顔になんかついてる?」

「……ううん、なんでもない」

あわてて目を逸らして、梨乃は手元のペットボトルに視線を落とす。そうしてからほんの少しの間をおいて、ぽつりと言葉がこぼれた。

「……お姉ちゃんって、ほんと変わらないよね」

「え?」

「綺麗だし、明るいし……いつもみんなの中心にいるっていうか」

「なに急に。褒め殺し?」

「……うん。私、お姉ちゃんが羨ましい」

愛梨が冗談めかして笑うのに対し、梨乃はソファに座りながら、クッションを抱き寄せて顔を埋めた。

「……え、梨乃?本当にどうしたの?なんでそんな卑屈モードに入ってんの?」

「……入ってないもん。ただ、私もお姉ちゃんみたいにお父さんに似てたら、何か違ったのかなって思っただけ」

その瞬間、愛梨の笑みがふっと止まる。

「……梨乃、それ、いろんな方面に地雷だからね?」

「地雷?どうして?」

「だって梨乃はお母さん似でしょ?華奢で小柄なとことか、ちょっと警戒心強いけど、笑うと抜群に可愛いとことか」

「……似てる、かな?」

「お父さん、そんなお母さんのこと世界一可愛いって思ってるじゃん?だから私、お父さんに『お前も日菜(ひな)に似ればよかったのにな』って言われたことあるんだよ」

「は?なにそれ、最低……」

「でしょ。まあ、ベロベロに酔ってたからしょうがないけど。あと鳩尾に一発入れといたからひとまずはチャラ」

「……ふっ、さすがお姉ちゃん」

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