治療不可能な恋をした
思わず漏れた笑いとともに、心の緊張が少しだけほぐれていく。
「私から見れば、梨乃が羨ましいよ。小柄で童顔、目もくりくりしてて、子うさぎみたいで。あとブルベだし」
「ブルベって……それ、重要?」
「めちゃくちゃ重要よ。映えるし」
軽口を叩きながら、愛梨は少し真面目な目で言葉を続けた。
「それに頭もいいし、医者としてちゃんと自立してて……ほんと、すごいと思うよ」
「……お姉ちゃん……」
姉にそんなふうに思われていたなんて、初めて知った。
からかうように笑いながらも、こうしてときどき本気の言葉をくれる。その絶妙なバランス感覚すら、梨乃にとっては眩しかった。
そういうところが、ずるい。でも──
誰より近くにいて、尊敬してきた姉の言葉だからこそ、じんわりと胸に染みた。
「……ありがと」
ぽつりとつぶやくと、愛梨がふっと目を細める。
「ほんとどうしたの?今日の梨乃、やっぱりちょっと雰囲気違うよ」
「……そうかな?」
「なんかこう……ぽやっとしてるっていうか、ふわふわしてるっていうか」
「ふわ……?」
「梨乃、もしかしてさ、好きな人でもできた?」
その一言が、胸の奥を鋭く突いた。思わず背筋が強張る。
「……ち、ちが……! そんなんじゃ…!」
「うっそ、マジ?ねえ誰?どんな人?身長は?性格は?顔は?年齢は?年収は?」
「質問多……ってか違うから!」
「まあまあ。これまで数々の恋バナを聞いてきた、恋のプロフェッショナルのお姉ちゃんに話してみなさいよ」
身を乗り出す愛梨から逃れるように、梨乃はソファの背にもたれた。