治療不可能な恋をした
「ち、ちょっと待ってってば。本当にそういうんじゃないから」
「でも、気にしてるんでしょ?顔赤いよ?そういうとこ昔から分かりやすいよ、梨乃は」
「……だからちが……」
言いかけた言葉が、ふと喉の奥で止まる。
気にしたくないのに、どうしても視界の端に入ってしまう。笑い声が耳に残る。ふとした表情が、頭から離れない。
「……そんなんじゃない。ただ……なんか、声を拾っちゃったり、気づくと目で追ってたりするだけで……」
自分で言いながら、その「だけ」がどれほど特別なことかに気づいてしまって、視線を泳がせた。
「いやいやいや。それ完全に恋だから。今どき小学生でも気づくわ」
「だから違うってば!」
「じゃあ逆に何なのよ?どうせ梨乃のことだから、職場と家の往復しかしてないでしょ。となると、職場の人……?」
「だからっ……」
言いかけた時だった。
──ガチャ。
玄関の扉が開く音がして、梨乃の声が宙に浮いた。