治療不可能な恋をした
「ただいまー」
母の明るい声に、すぐ後ろから小さな足音がぱたぱたと続く。
「あ、いいところに帰ってきた。ちょっとちょっと、おかあさーん!!」
愛梨はソファから勢いよく立ち上がり、顔をきらきらと輝かせながら叫んだ。
「梨乃が恋してるってよー!」
「ちょっ、ほんっとにやめてってば!!」
梨乃は慌ててクッションを手に取り、思いきり投げつける。
しかしそれを軽やかにかわして、愛梨はケラケラと笑いながら廊下へ走っていった。
「梨乃ったら、やっと起きたの?」
「梨乃ねえがどうかしたの?」
母と甥の声が重なり、そこに愛梨の声が勢いよく乗る。
「ふふー!梨乃が初恋かもしれないって〜!」
「そうなの?良かったねえ、梨乃」
「えっ!?梨乃ねえ、マジで!?どんな男!?」
「宙まで……! ああもう……っ!」
顔が熱い。耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかった。
梨乃はソファに顔を埋め、深く沈み込んだ。
その後も何かと性格のよく似た親子に両側からしつこく詰められ、顔の火照りはしばらくのあいだ、どうにもならなかった。