治療不可能な恋をした
. . 𖥧 𖥧 𖧧


それから、何日も日が経った。

けれど姉に言われた言葉が、あの日からずっと頭の中に残っている。

(これは、恋なんだろうか)

そう問うには、まだ胸の中が曖昧すぎた。

ただ、目が追ってしまう。声に敏感になる。無意識のうちに考えている自分がいる。

そんな自分がどこか他人のように思えて、少しだけ怖かった。


ただの同級生。仕事上の同僚。過去の一夜。

特別なものなんで何もないと思うのに。

そのすべてに色がついて見えるようになってしまったのは、きっと姉から感情の名前を与えられてしまったしまった、この気持ちのせいだ。

意識したくなんてなかった。
気づいたら、そうなっていた。

気を抜けば姿を探してしまう。何か言えば、それをどう受け取られるか考えてしまう。

そして、そんな自分に気づいて、慌てて目をそらす。

(ほんとうに……これは……)

言葉にするには、まだ怖すぎる。でももう、なかったことには、もうできない。

(……ダメだ。今はそんなことを考えている場合じゃないのに)

頭を振り、梨乃は会場を見回した。


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