治療不可能な恋をした
(……ああ、もう)
ほんの少しだけ、目を閉じる。
姉に言われた「恋じゃん」という言葉が、頭の奥で何度も反響していた。
そんなはずないと思った。だけど、こうして感情がざわついている今、それを否定しきれなくなってきている。
(これが、そうなの……?)
嫉妬──その二文字が、頭をよぎる。
恋なんて、自分には縁のないものだと思っていた。なのに今、自分の知らない彼の交友関係を聞くだけで、こんなにも心が軋む。
軽口を叩かれる理人を見て、まっすぐにその輪に入れない自分が苦しくなる。どこにも行き場のない感情だけが、身体の内側に熱を帯びて積もっていく。
(私は、逢坂くんのこと……)
目の奥がじんと熱くなり、視界がぼやける。これが悲しみのせいなのか、それとも酔いのせいなのかはわからない。
わからないまま、再びカクテルを口に運ぶ。
舌先に残る甘さと、喉を通るアルコールの熱。
そのぬるい痛みだけが、今の感情を少しだけ麻痺させてくれる気がして──梨乃は、無意識のうちにもう一度グラスを傾けた。