治療不可能な恋をした

理人の体が少し起き上がる。そっと膝を抱えて引き寄せたその動作に、梨乃の体が無意識に強ばる。

あてがわれた熱に、過去の記憶が一気に蘇った。

──かつて、たった一度だけ触れたその熱。

あのときの痛みと戸惑いが、今も梨乃の中に深く残っている。

何も言わない梨乃の様子を察したのか、理人はそっと、もう一度キスを落とした。労わるように優しく、けれどその奥にある欲望だけは隠しきれていなかった。

次の瞬間。
ぐっと、押し広げられるように熱が入り込んできた。

「……っ…ぅ、」

息が詰まり、喉の奥から声が漏れそうになる。

「仁科……力抜いて。大丈夫だから」

優しい声色に、言葉にならない感情が込み上げる。

名前を呼ばれるたび、ほんのひとときでも自分だけを見てくれているようで──胸の奥が、ずきりと痛んだ。

(……お互い、雰囲気に飲まれただけ。あのときと同じ)

理人の熱が、奥深くまで満たしていく。そのたびに、引いたはずの一線が少しずつ揺らいでいく気がした。

だけど、いつまでも引きずってはいられない。明日になればきっと、彼は何事もなかったように器用に振る舞うのだろう。

それでも今だけは。

(逢坂くん……。すき、です)

この腕の中が自分だけの居場所であってほしい。

そんな幼い願いを抱いた自分が、たまらなく、哀しかった。
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