治療不可能な恋をした
特別な感情だと確信したのは、卒業式。
学位記を手にした梨乃が、式場の外で両親らしき家族と並んで写真を撮っていた。
彼女によく似た小柄な母親と、紳士然とした父親。
そして、その間に立つ梨乃は、理人が見たことのないくらい柔らかい表情をしていた。
淡い色の袴に身を包んだ梨乃は、笑っていた。それは講義の時でも、病院実習の時でも見せたことのない、心から気を許した人にしか向けない、そんな笑顔だった。
(……可愛い、なんて)
胸の奥に、ふっと何かが差し込む。
──なんで俺、今、こんな気分になってるんだろう。
その感情が“恋”なんて言葉に結びついたのは、ほんの数秒後だった。
気づいた時には、もう目が離せなくなっていた