断罪の鐘で永遠を誓う ~かつて攫われた王妃候補は、最愛の誘拐犯に会いに行く~
 翌日、私の幸せはいとも簡単に崩壊した。

 私たちを囲む祖国の兵士。
 色んな箇所を刺されて倒れるラドル。

 押さえても押さえても止まらない出血に、私は泣き叫ぶことしかできなかった。

「私たちの幸せを奪わないでっっっ!!!!!!」

 涙で滲んでよく見えないが、兵士たちはただ静かに立っていた。兵士の後ろには、王太子や両親の姿もある。

「やめて!!何でっ……!!」
「エレナ、あの男はもう何もしてこないよ。大丈夫だから、落ち着いて」

 そんな気色悪い言葉と共に近づいて来ようとする王太子を、思い切り睨みつける。

「ふざけないで!何で、何でこんな酷いことをするの!!!」
「エレナ」
「彼が何をしたのよ!…ねぇ、お願いだからこのまま殺さないでよ」
「じゃあ、自分の足で僕の元においで。そうしたら、その男を治療してあげる」

 そう言って王太子は、私に向けて両手を広げた。私の腕の中では、ラドルは浅い呼吸を繰り返している。
 
 私が我慢すれば彼は助かる。
 なら私がすべきことは1つだ。

 血溜まりから立ち上がり、王太子の元へ向かう。手の届く範囲まで近づけば、自身のドレスが淀れることも厭わず、彼は私を抱きしめた。

「誘拐犯に救命処置を。手術は城の医務室で行う。殺さないように連れていけ」

 その声で、兵士は一斉に動き出した。
 
 なんで、私たちから幸せを奪うんだ。
 あの何の面白みもない、地獄のような生活に戻されるなんて嫌だ。

「ねぇ、待って」

 せめて、彼には私が本気でラドルのことを愛している証を残したい。

 彼の左手の薬指に、思いきり噛みつく。
 願わくば、私と彼が再び出会うまで、この噛み痕が消えませんように。

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