勇者に婚約破棄された魔女は、魔王に婚約を申し込みに行きました。 ~かつて最恐と呼ばれた魔女の封印は、無知な勇者が解きました~
 じれったい2人のことを、周囲が優しく見守っていたその時、庭園にいた魔王とジアンナに、兵士が慌てた様子で駆け寄ってきた。

「魔王様!」

 兵士は息を切らしながら叫んだ。彼の顔は恐怖に引き攣っている。魔王は顔をしかめ、ジアンナは不思議そうに首を傾げた。

「そんなに慌ててどうした」
「金色の鎧をつけた人間の男が、兵をなぎ倒しながら、こちらに向かってきています!あれは、勇者に違いありません!!!」

 その言葉に、魔王は眉間に深い皺を刻む。

「分かった。報告ありがとう。悪いが、ここに居る者たちも加勢に行ってくれるか」
「「「はっ!!」」」

 命令を出した魔王は、駆けていく兵士を見送る。そして、静かにしているジアンナを見下ろした。

「ジアンナ。今すぐハンツの所へ行って身を、」
「魔王様。きっと、その勇者の目的は私でしょう」

 あくまでも冷静な声。しかし、確かに魔力が揺れている。感情が大きく揺れ動いている証拠だ。

「ならば、私が徹底的に相手をします」

 いつものような幼さはどこへ行ったのか、ジアンナは冷たく笑う。その笑みに、魔王はゾッとした。


  そこにいるのはジアンナではなく、かつて【最恐】と呼ばれた魔女。


 不似合いだと思っていた異名の理由を、魔王はその時、確かに理解したのだった。
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