勇者に婚約破棄された魔女は、魔王に婚約を申し込みに行きました。 ~かつて最恐と呼ばれた魔女の封印は、無知な勇者が解きました~
ふと、魔王が疑問をそのまま、口に出した。
 
「そういえば、ジアンナよりも強い女性とやらは、どこにいるんだ?」
「魔導士のクレア、という方らしいですよ。勇者パーティーの一員のようです」
「……クレアはもういい。俺を捨てて逃げたからな」
「…本当に見る目がないな…」
「見る目がない上に自業自得なので、救いようがないですね」

 ジアンナはそう言って、けらけらと笑った。ライアンの顔は、怒りと屈辱で真っ赤になっていた。

「そんなに言ってやるなよ…。仮にも、元婚約者なのだろう?」
「え、だからなんですか?」

「この、悪魔め!」

 ライアンが剣を構えた。その切っ先が、迷いなくジアンナに向けられる。しかし、ジアンナは動じない。彼女はただ、哀れむような目でライアンを見つめていた。

「あらあら。私に勝てると思っているのですか?」

 ジアンナがそう言うと、ライアンは怒りに満ちた声で叫んだ。

「黙れ!俺は勇者だ!お前のような魔女ごときに負けるわけが、」

 全て言い終わる前に、ライアンの身体は容赦なく壁際まで吹っ飛ばされる。ジアンナは、それを張り付けた笑顔のまま見つめていた。

「魔女『ごとき』ですか。あなたは、まだご自分の未熟さを把握されていないようですね」
 
 ジアンナはスッと腕を真っすぐ伸ばす。
 そう、ジアンナは一切動かずして、ライアンのことを吹っ飛ばしたのだ。詠唱どころか、動作もない。

 その事実に今更気づいたライアンの顔に浮かぶのは、『絶望』の文字。

「勇者様。あなたは、どれほど強くなったのかしら?まさか、1年も無駄に過ごしていたわけではないでしょう?」

 ジアンナは、楽しげに問いかけた。
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