勇者に婚約破棄された魔女は、魔王に婚約を申し込みに行きました。 ~かつて最恐と呼ばれた魔女の封印は、無知な勇者が解きました~
 しかし、ライアンは小さく首を振るばかり。
 
「お、俺は、お前を連れ戻さないと、、。な、なあ!元婚約者だろう…。慈悲とか、」
「あははっ、あるわけないじゃないですか。手酷く捨てて、さらに自業自得でドツボにハマる。他人に縋る勇者様なんてみっともないですよ~」

 ジアンナの言葉は、ライアンのプライドを的確に折っていく。

「後悔するなら、あの世でどうぞ。ま、私は当分行きませんが」

 その瞬間、ライアンのプライドは完全に崩壊した。彼は、自らの無力さと、ジアンナの圧倒的な力の差を思い知らされ、絶望に打ちひしがれた。

「…あ…あ…」

 ライアンは、ただみじめに震えながら、ジアンナを見つめる。明らかに渦巻いていく魔力に、自分の死を悟ると、ライアンは壁にめり込んだまま気絶した。
 それを見届けてから、ジアンナは静かに魔力を霧散させた。彼女は、元からライアンの命を奪う気は無かった。散々脅かして、これに懲りればいいと思ったまでだ。

「魔王様。この愚かな勇者はどうしますか?」

 ジアンナが魔王にそう問いかけると、魔王は呆れたような、そして少しだけ困ったような顔をした。
 彼もまた、ジアンナが勇者の命を奪う気がないことは察していたのだ。だから止めることなく、静かに見守っていたのだ。

「……好きにしろ。だが、あまり派手なことはするなよ」

 魔王の言葉に、ジアンナはにっこりと微笑んだ。

「はーい!」

 ジアンナは再びライアンの方を向くと、彼の足元に向けて手をかざした。

「さようなら、勇者様。これに懲りたら、国で大人しくしていてくださいね」

 その瞬間、ライアンの身体は、足元に描かれた魔方陣に吸い込まれていった。彼は最後まで、ジアンナの圧倒的な力に、一切抗うことができなかった。

 魔方陣が消えた後、ジアンナは自分が作ってしまった壁の傷を修復した。ついでに、他の箇所も直すと、何事もなかったかのように幼く笑った。
 
「さあ、魔王様。怪我をしてしまった方の手当てに行きますよ!あの聖剣でつくられた傷は相当治りにくいでしょうから、一刻も早い治療を!ああ、あと、壊されてしまった城の一部も直さないと!」
「お、おい!転ぶなよ!」
「魔王様!早くいらしてください~!」
 
 ジアンナは、元気よく魔王城の廊下を走り出す。魔王もまた、笑いながら歩きだしたのだった。
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