蒼へ沈む
私は、どうしようもなく子供で、ひどく臆病だった。
今の私なら。
もし燈矢が望んでくれるのなら、絶対にもう二度と、あんな風に彼の手を離したりしないのに。
父に怒鳴られようが、世間からどんな目で見られようが、そんなものは構わない。今の私には、一人で生きていける仕事があり、彼を支えるだけの力がある。彼と一緒に生きていくという覚悟も持てるし、自分の選択のすべてに責任を取ることもできる。
……でも。
彼があの時、人生で一番辛くて、一番誰かに側に居てほしかった時に。
彼と一緒に傷つくことから逃げ出し、あんな残酷な安堵感で彼を裏切った私を。
今更、彼が望んでくれることなんて、多分一生、ない。そんなの、期待する事すら許されない。
『俺は、お前とは違う』
彼が私を突き放そうと放ったあの静かな声が、脳裏に蘇る。彼が私に線を引こうとするのは、彼自身のコンプレックスのためだけじゃない。私に対する、静かで決定的な『諦め』なのだ。
……そして。私の方から彼を望むことも、きっと、許されない。
どれだけ彼を愛していても、どれだけあの頃の罪を償いたいと願っても。一番肝心な時に彼を見捨てた私には、彼の隣で無邪気に笑う資格なんて、もう永遠に失われてしまっているのだから。