蒼へ沈む
4.2
ふと目を覚まし、自室のベッドから身を起こしてカーテンの隙間から外を覗き込んだ。
空気が、ひどく冷たく張り詰めている。
夜から激しい嵐が近づいているという天気予報の通りなのだろう。海の果ての空気は恐ろしいほど澄み渡り、空はいつものような穏やかな燈色を帯びた深青ではなく、血が滲んだような、鮮やかで綺麗な桃色の混じった色をしていた。
その、どこか不吉で、けれど目を奪われるほど美しい燃えるような朝焼けに、私はしばらく窓辺から動くことができなかった。
『――嵐が近いと、空気が綺麗になって、水蒸気に光が反射するから、朝焼けが綺麗に見えるんだよ』
そういえば。
私にそう教えてくれたのも、他でもない、彼だった。
15年前の夏。図書室の窓から海を見下ろしながら、図鑑を片手に誇らしげに笑っていた、あの無邪気な少年の声。
彼が教えてくれた通りの、綺麗で、生々しい空の色だった。
窓ガラスにそっと額を押し当てると、ひんやりとした冷たさが肌に伝わってくる。
私の知る世界の美しさは、いつだって燈矢が教えてくれたものばかりだ。空の色の理由も、深海で鳴く鯨の孤独も、誰かを愛して胸が張り裂けそうになるこの痛みも。全部、彼が私に与えてくれたものなのだ。
これから来る嵐の予感と、私の心の中でどうしようもなく荒れ狂い始めている感情が、その桃色の空に完全に重なり合っていた。
私は、無意識のうちに胸元にある『夜明け色のシーグラス』を強く握りしめ、来るべき長い一日に向けて、静かに目を閉じたのだった。