蒼へ沈む
普通の男なら。
俺が、こんな欠陥品の身体じゃなければ、こんなところで迷ったりしない。
ずぶ濡れになった彼女が、すべてを捨てて、自分を痛いまでに求めてくれていることは、肌越しに痛いほど伝わってくる。
五体満足の俺だったなら。身体を見せることに躊躇したりしない。震える彼女をこの腕で優しく抱き抱えて、ベッドへ連れて行くこともできるはずなのに。
怖い。
これ以上を自分から望んで。醜い俺の左脚を見た彼女の目に、少しでも戸惑いや、同情や、憐憫の感情を認めてしまうのが、恐ろしくてたまらない。
――俺は、なんて卑怯な男なんだ。
壁に背中を預けながら、俺は心底自分自身を軽蔑した。
親父さんの反対や、自分の立場を理由にして。
彼女に幸せになってほしいなんて、いかにも聞き分けのいい綺麗な言葉で鎧を纏って、自分を正当化していただけだ。
結局、俺は傷つくのが怖い。
彼女に、今の自分の惨めで醜い『すべて』をぶつける覚悟がないだけの、ただの臆病者だった。