蒼へ沈む
膝から下がない、バランスの悪い惨めな身体。
そんな欠陥品の俺が、こんなにも美しくて完全な彼女を相手にして、普通の男のように最後まで上手く抱ききれるのか?
途中で痛みに顔を歪めたり、滑稽な体勢を晒したりして、結果的に彼女を幻滅させてしまうのではないか。
考え出したら止まらなくなって、熱を帯びた身体が急速に冷えていくのを感じた。
「……っ、」
俺は震える彼女からゆっくりと腕を解いた。
「駄目だ、夏菜」
自分でも驚くほど、震えた情けない声だった。
「……やっぱり、駄目だ」
俺がその拒絶の言葉を漏らした瞬間。彼女の身体から、さっきまでの甘い熱が急速に失われ、絶望の冷たさに変わっていくのが肌越しに分かった。
「……どうして、燈矢」
「俺だって……!」
泣きそうな声で縋ろうとする彼女の言葉を、俺は血を吐くような叫びで遮った。
「俺だって……せめて、こんな身体じゃなかったらって、何度も思ったよ……っ!」
初めて彼女にぶつける、俺の底なしの劣等感。
隠してきた痛みが、決壊したダムのように溢れ出す。
「お前みたいに綺麗で、真っ当な人間の隣に立てる身体だったらって、この15年間、狂うほど考えた! でも現実は違う! こんな欠陥だらけの身体じゃ、上手く抱いてやれるなんてとても思えない……俺は……お前にそんな惨めな姿を見せたくない……!」
両手で顔を覆い、俺は子供のように声を震わせた。
「……好きだ」
ついに、絶対に言ってはいけないと思っていた言葉が、口をついて出た。
「15年間ずっと、忘れたことなんてなかった。あの図書室でお前と笑い合った日から、ずっと……お前だけを愛してる」
「燈矢……っ」
「だからこそ……俺じゃ駄目なんだって……!」
愛しているから。俺のすべてだから。
これ以上、俺のこの薄汚れて壊れた人生に、彼女を巻き込むわけにはいかなかった。
「俺の知らない場所で。俺なんかよりずっと立派な、知らない誰かと……お前には、幸せになってほしいって、本気で思ってたのに……っ」
俺は顔を覆ったまま、喉の奥から絞り出すように泣き叫んだ。
「どうして……どうして分からないんだよ……!」
外で荒れ狂う雨音よりも激しく。
俺の悲痛な慟哭だけが、暗い寝室にいつまでも、残酷に響き渡っていた。