借金令嬢は異世界でカフェを開きます

 ふたりでサクラになる気なのか、それとも単純にクレープが気になるのか。興味津々なことを隠せない顔のオウリ夫妻に、グレースは愛想よく頷いた。

「はい、クリームだけとイチゴジャム入りですね。コーヒーはどうされますか?」

 普段はめったにしないけれど、大量に淹れたコーヒーも保温機能を施した大きなポットに準備している。外で飲む温かいコーヒーも格別だ。

「ああ、ここはコーヒーが飲めるんですね。俺、コーヒー好きなんですよ。砂糖たっぷりで二杯お願いします」

 甘いコーヒーとクレープをもってベンチコーナーに移動したオウリたちは、まわりから注目されていることに気づいて居心地悪そうにしていたが、やがて恐る恐るといった感じでクレープを一口かじって目を丸くした。
 そのまま黙々と夢中で食べ続ける二人に、周囲から「どうなんだ?」という声が囁かれるのが聞こえる。そんな中、一人の男性が数人の女性を伴ってグレースの前にやってきた。

「こんにちは、レディ・グレース。遅くなって申し訳ない。オズワルドが仕事で来ることができないので、私がお手伝いに参りました」

 柔和な口調と表情ながら、見るからに屈強そうな体格の男性はビバルといい、カフェの常連の一人だ。オズワルドとは親しいらしく、たまに一緒にカフェに来ることもある。

「こんにちは、ビバルさん。やっぱりオズワルドさんはお忙しいんですね」
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