隠れ才女な転生王女、本日も王宮でお務めです~人質だけど、冷徹お兄さんと薬草知識でみんなを救っちゃいます~
序章
その日は、雨が降っていた。荒れ狂う天候の中、そびえたつ真っ白な宮殿。
「どうしてこんなことに……」
「まさか、私達が負けてしまうなんて」
煌びやかな装飾に囲まれた王座。
そこは、リーテンダ王国と呼ばれる大陸でもそれなりの大きさを誇る国の、最も高貴な者達の存在する場所である。しかしその場にいる国王と王妃の顔は、青ざめている。王妃などは今にも倒れそうだ。
なぜ、彼らがそのような状況に陥っているかといえば戦争に負けたからである。
そう、この国はつい先日まで戦争を行っていた。
他国の潤沢な資源を狙った結果、数多くの血が流れた。
国王と王妃は、欲を出しすぎてしまった。周りの者達の助言など一切聞こうともせずに、戦いを推し進めたのだ。
――そしてその結果、待っていたのは敗北である。
「陛下! どうなさいますの!」
国王の腕に縋り、嘆く王妃。国王はそれを煩わしそうに見ている。
リーテンダ王国の国王にとって、王妃の嘆きを気にする余裕などなかったのだろう。もう既に、勝者であるステリクア王国から停戦の条件を言い渡されている。それも……当然のことながらリーテンダ王国に不利なものである。歴史を作るのは勝者であり、敗者はそれに付き従っていく他ない。
「……王族の一人を人質として送らなければならないなんてっ!」
そう、王妃が嘆いているのはその条件の一つに王族を人質として差し出すことがあった。かの国は、戦争で勝利し続けた国であった。
元々はリーテンダ王国と変わらない規模の、他国への影響力の少ない国だった。しかしおよそ十五年前、今の国王が王位を継いでからというものの国力を増していた。それでも勝てるという勝算を持ったのは、他国との連合を組むことが出来たからだろう。
それでも、負けた。
「そうだわ……!」
正気を失ったかのようにブツブツと声を上げていた王妃が、はっとしたように顔を上げる。そんな王妃を冷たい瞳で据える国王。
「王族だというのならば、あの娘でもいいではないですか! 私の子供である必要があるなんて書かれてないのですから!」
王族の子供を渡さなければならないという話を聞いて、真っ先に自身が腹を痛めて産んだ子供を思い浮かべたものの、そうである必要などないのだと王妃は気づいた。
その言葉に国王もはっとする。
「はははっ、そうだな。あの娘を差し出せば事が治まるのならばそれが一番良いな」
気分よく、国王はそう言い放った。
そしてすぐさま、ほとんど表舞台に立たない第一王女ヘーゼリア・リーテンダが人質としてかの国に向かうことが決定した。
彼女は亡き先代王妃の忘れ形見の少女であった。
「どうしてこんなことに……」
「まさか、私達が負けてしまうなんて」
煌びやかな装飾に囲まれた王座。
そこは、リーテンダ王国と呼ばれる大陸でもそれなりの大きさを誇る国の、最も高貴な者達の存在する場所である。しかしその場にいる国王と王妃の顔は、青ざめている。王妃などは今にも倒れそうだ。
なぜ、彼らがそのような状況に陥っているかといえば戦争に負けたからである。
そう、この国はつい先日まで戦争を行っていた。
他国の潤沢な資源を狙った結果、数多くの血が流れた。
国王と王妃は、欲を出しすぎてしまった。周りの者達の助言など一切聞こうともせずに、戦いを推し進めたのだ。
――そしてその結果、待っていたのは敗北である。
「陛下! どうなさいますの!」
国王の腕に縋り、嘆く王妃。国王はそれを煩わしそうに見ている。
リーテンダ王国の国王にとって、王妃の嘆きを気にする余裕などなかったのだろう。もう既に、勝者であるステリクア王国から停戦の条件を言い渡されている。それも……当然のことながらリーテンダ王国に不利なものである。歴史を作るのは勝者であり、敗者はそれに付き従っていく他ない。
「……王族の一人を人質として送らなければならないなんてっ!」
そう、王妃が嘆いているのはその条件の一つに王族を人質として差し出すことがあった。かの国は、戦争で勝利し続けた国であった。
元々はリーテンダ王国と変わらない規模の、他国への影響力の少ない国だった。しかしおよそ十五年前、今の国王が王位を継いでからというものの国力を増していた。それでも勝てるという勝算を持ったのは、他国との連合を組むことが出来たからだろう。
それでも、負けた。
「そうだわ……!」
正気を失ったかのようにブツブツと声を上げていた王妃が、はっとしたように顔を上げる。そんな王妃を冷たい瞳で据える国王。
「王族だというのならば、あの娘でもいいではないですか! 私の子供である必要があるなんて書かれてないのですから!」
王族の子供を渡さなければならないという話を聞いて、真っ先に自身が腹を痛めて産んだ子供を思い浮かべたものの、そうである必要などないのだと王妃は気づいた。
その言葉に国王もはっとする。
「はははっ、そうだな。あの娘を差し出せば事が治まるのならばそれが一番良いな」
気分よく、国王はそう言い放った。
そしてすぐさま、ほとんど表舞台に立たない第一王女ヘーゼリア・リーテンダが人質としてかの国に向かうことが決定した。
彼女は亡き先代王妃の忘れ形見の少女であった。
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