隠れ才女な転生王女、本日も王宮でお務めです~人質だけど、冷徹お兄さんと薬草知識でみんなを救っちゃいます~
1-1
「ふぅ……」
私の名前は、ヘーゼリア・リーテンダ。六歳。
今は人質としてステリクア王国へと向かっている最中なの。理由は、父親が戦争で負けたから。
子供である私は戦争の決定権なんて当然ない。それでも私はリーテンダ王国の王女だからこそ、こうして向かっている。
リーテンダ王国の国王……私にとって父親にあたる人は、冷たく私に言い放った。
――ステリクア王国へ、お前が人質としていくのだ。
その時の冷たい視線を思い出し、膝の上で拳をぎゅっと握る。私の父親は、お母様が生きていた時はともかくとしてそれ以降はその役割を放棄していた。話しかけられたのも随分久しぶりだった。
それなのにこんな風に急に私を人質に送るなんて本当に親としてどうかと思う。うん、ろくでなしだわ。
思えばお母様が生きていた時から自分勝手だったもの! お母様が亡くなってから私が辛い状況にあっても手を差し伸べることなども一度もなかった。
そんな父親に対して愛情というものは特にない。人質として他国に向かうことに対して不安がないわけではないけれど――これは良い機会なのでは? とそんな風には思っている。
私の思考を読める人が居れば、楽観的すぎると驚くかも。
私が六歳だけれどもこんなに落ち着いているのは、前世の記憶というものをなんとなく持っているから。
異なる世界で、生きていた大人の女性。産まれた時からあるその記憶は、私にとっては特別なものだ。違う人の一生が、頭にあるというそういう状態なの。
幼い頃は不思議だった。皆、こうやって知らない誰かの一生を知っているんじゃないかって思っていた。でもお母様から「そんな人は珍しいから、人に伝えない方がいい」とそう言われたの。
だから私はお母様以外には、その記憶があることを告げていない。
「人質生活って、ご飯はちゃんともらえるのかしら」
リーテンダ王国では、まともに食事を摂れないこともあった。それはお母様が亡くなった後に、お父様が迎えた今の王妃様が私のことを嫌っていたから。私には母親違いの妹と弟が居るの。
お母様がなくなる前から……関係があったらしいの。私と同じ年の妹だもん。
あくまで高貴な身分の人を人質として受け入れるのだから、酷い扱いをされてもおかしくはない。最悪の場合は……もしかしたらリーテンダ王国に居た頃より、もっと辛い環境なるかもしれない。なんていうことはちゃんと考えている。
それでも、私は環境が変わることに期待している。
それに……私は首から下げられているネックレスを手に取る。私の瞳の色と同じ橙色の石がついている。
これは亡きお母様の残してくれた大切なものだ。
『ヘーゼリア。どんな時でも希望を忘れてはいけないわ』
お母様はいつもそう言って笑っていた。穏やかで優しい笑みを私は今でも覚えている。というより、忘れないようにしたいとそう思って何度も思い起こしているというのが正しいかも。
お母様……私は頑張りますから、どうかお空で見守っていてください。
私は馬車に揺られながら、そんな決意をした。
そして長い時間をかけて、私はステリクア王国へとたどり着いた。
*
「ようこそお越しいただきました。ヘーゼリア王女。では、お部屋へ案内しますね」
にこやかな笑みで笑いかけられる。
洗練された動きのその侍女が笑顔を向けてくることに私は驚いた。だって敗戦国の王女――それも私みたいな小さな子相手にこんな風に丁寧にする必要はない。
私の前世の世界には、物語が溢れていた。スマートフォンという便利なアイテムでいつでもそういった物語に触れることが出来て、私はそれを思い起こすと楽しいなとワクワクしていた。
そう言う物語に触れたことと、王女として学んだ知識から横暴な態度をされても当然だったのだ。
それでもこんなにも優しい笑みを浮かべられると、本当に私のことを受け入れてくれようとしているのではないかなんてそんなことも思う。いや、でも侍女としての責務だからとちゃんとしているだけかもしれなくて、内心は分からないけれどね。
「ありがとう。どんな部屋なのか楽しみだわ」
私はなるべく人当たりが良い笑みを浮かべる。折角私に対して笑いかけてくれる人なのだから、味方につけないとね!
私は六歳で、見た目も結構可愛い方なの。お母様は生きていた頃、私のことを可愛いって言ってくれていたわ。お母様が亡くなってから、私を可愛いなんて言う人はいなくなっていたけれど、前世の記憶があるから私は自分が可愛いことを知っているの。
お日様色の髪と瞳。丸々としていて、笑いかけられたら誰でも頷きたくなるはず! 少なくとも余程の事情がなければこんな可愛い私に辛くあたる人なんていないはずだもの。
私の言葉にその年配の侍女は驚いた顔をしていたわ。どうしてなんだろう?
不思議に思いながらも私は侍女についていって、部屋に連れて行ってもらった。
「わぁ、素敵な部屋ね」
部屋の中に足を踏み入れて、私は思わずといったように声を上げた。
だって想像していたよりもずっと豪華だった。私がリーテンダ王国で過ごしていた部屋よりもずっと定例がきちんとされているわ。
もしかして人質の一人一人にこういった部屋を与えているのかしら? ステリクア王国は財源に余裕があるのね。少なくともこれだけの部屋を用意してもらえるのならば、未来は明るい気がする。
これなら少しぐらい欲しいものがあったら言っても問題ないかもしれない。
ああ、でもちゃんと人質として弁える必要はあるけれどね。まずは何処まで私が行動を起こしていいか考えないと。
「国王陛下にお礼をお伝えしたいわ」
「お礼、ですか?」
「そうよ。このような部屋をご用意してくださったんだもの」
私がにっこりと微笑むと、侍女は一瞬なんとも言えない表情をした。発言を間違ってしまったかしら? なるべく嫌な思いをさせないようにと思ったのだけど!
私が不安に思っていると、侍女は次の瞬間にっこりと笑った。
「他の国の方々が集まってからまとめてご挨拶になるかと思います。なのですぐには難しいかと」
「分かったわ。なら、お手紙を書いてもいい?」
こういう感謝の気持ちは早めに伝えた方がいいって、お母様も言っていたもの! 私もね、後から言われると忘れてしまったりするんだよ。だから手紙を書いてみようと思った。
子供が嫌いだとか、人質をどうとも思わないとかそういう人だったら別だけど、こんな部屋をくれる人なら手紙を受け取ってくれるのではないかと思ったの。
「分かりました。お渡ししましょう」
「じゃあ、便箋をもらえたりするかしら?」
当然のことながら持ってきた荷物の中に便箋などはない。私があの国から持ち出せたものなんて最低限だ。おそらく人質たちの中でもかなり荷物が少ないと思う。
私の言葉に侍女は頷いて、一旦部屋から出て行った。
私は一人っきりになって、ほっと一息を吐く。
あの侍女に明確な敵意がない事はなんとなくわかる。本物の悪意を私は知っている。だから私の敵ではないとは思うのだけど、それでもやっぱり一人の方がほっとする。これから先、私はしばらくの間はこの国で過ごす。短くても数年は。そして長ければもっと……。
過ごしやすいようにしなければいけないわ。でも出来るかな。
なんて暗いことを考えてしまって首を思いっきり振った。お母様なら、こんな時に笑っているだろう。そして状況を改善しようとなんとかしたはず。
まずは状況を確認することよね。このような部屋をもらえた段階で悪くはない。
私は何処まで望んでいいんだろうか? 部屋の外に出る許可はどれくらいあるんだろう? 毎日食事を摂らせてもらえたりするんだろうか? 本を読みたいと言ったら読ませてもらえたりする? ……一つ一つ確認していこう。
この国に滞在中に出来る限りのことをする! もし何かがあったとしてもこれから先に役立てるために。
「……お母様なら、きっとそれを望んでくれるはず」
私がぽつりとつぶやいた時、部屋の扉が開く。一瞬びくっとしてしまったけれど、便箋をとりに行ってくれた侍女だった。
その侍女から便箋を受け取ると、私はお礼の言葉をしたためる。文字を書くのはそこまで得意ではない。あんまり書いたことがないから。それでもなるべく丁寧に書く。お礼を書くだけなのに凄く時間が掛かっちゃった。それにあんまり上手じゃない。
一回目に書いたものを思わず丸める。
「捨てるのですか?」
「……上手く書けなかったから」
しゅんとしてそう言えば、侍女は笑った。
「上手く書けていなくても陛下は受け取ってくださいますよ」
そう言われた。本当にそうなのだろうか? なんて思いながらもまた頑張って書いた。次の失敗作はその侍女に渡した。
「あ、ごめんなさい。名前をちゃんと聞いてなかったわね」
「ドリーナと申します」
向こうから名を名乗らなかったのにも何かしらの意味があるのかも。一先ずそのあたりは後々ちゃんと話して知っていけばいいか。
「ドリーナというのね。これからよろしく」
「はい。ただこの国に滞在なさる方々の侍女は日替わりなのでヘーゼリア王女の元に常に控えることはないのですが……」
「ふふっ。そうなのね。でもこれからお世話にはなると思うから、名前を聞けて良かったわ」
日替わりで変わる形ならば、侍女や使用人などの名前を周りの子達は気にしないし、聞かないかも。
私は王族としてはどうなのかと思う暮らしはしていたけれども、仕えてくれる人たちのことを全く気にしない人っているものね。
折角この国で過ごすのだから、私は沢山の人の名前と顔は覚えておきたいな。少なくとも私は自分のことを知ってくれている人の方が嬉しいもん。
「よし、上手く書けたから良かったらこれを陛下に届けてくださる?」
「はい。かしこまりました」
会話をしながら、なんとか一つ、上手く書くことが出来た。まだまだ下手だけれども、この位なら子供だし許されるはず……!
その後、私は同じくこの国にやってきた子供達と挨拶したいなと思ったのだけど、遅い時間帯だから今日は駄目だって言われた。
だからその日はそのままゆっくり眠った。ふかふかのベッドで眠りにつくのは久しぶりだった。
私の名前は、ヘーゼリア・リーテンダ。六歳。
今は人質としてステリクア王国へと向かっている最中なの。理由は、父親が戦争で負けたから。
子供である私は戦争の決定権なんて当然ない。それでも私はリーテンダ王国の王女だからこそ、こうして向かっている。
リーテンダ王国の国王……私にとって父親にあたる人は、冷たく私に言い放った。
――ステリクア王国へ、お前が人質としていくのだ。
その時の冷たい視線を思い出し、膝の上で拳をぎゅっと握る。私の父親は、お母様が生きていた時はともかくとしてそれ以降はその役割を放棄していた。話しかけられたのも随分久しぶりだった。
それなのにこんな風に急に私を人質に送るなんて本当に親としてどうかと思う。うん、ろくでなしだわ。
思えばお母様が生きていた時から自分勝手だったもの! お母様が亡くなってから私が辛い状況にあっても手を差し伸べることなども一度もなかった。
そんな父親に対して愛情というものは特にない。人質として他国に向かうことに対して不安がないわけではないけれど――これは良い機会なのでは? とそんな風には思っている。
私の思考を読める人が居れば、楽観的すぎると驚くかも。
私が六歳だけれどもこんなに落ち着いているのは、前世の記憶というものをなんとなく持っているから。
異なる世界で、生きていた大人の女性。産まれた時からあるその記憶は、私にとっては特別なものだ。違う人の一生が、頭にあるというそういう状態なの。
幼い頃は不思議だった。皆、こうやって知らない誰かの一生を知っているんじゃないかって思っていた。でもお母様から「そんな人は珍しいから、人に伝えない方がいい」とそう言われたの。
だから私はお母様以外には、その記憶があることを告げていない。
「人質生活って、ご飯はちゃんともらえるのかしら」
リーテンダ王国では、まともに食事を摂れないこともあった。それはお母様が亡くなった後に、お父様が迎えた今の王妃様が私のことを嫌っていたから。私には母親違いの妹と弟が居るの。
お母様がなくなる前から……関係があったらしいの。私と同じ年の妹だもん。
あくまで高貴な身分の人を人質として受け入れるのだから、酷い扱いをされてもおかしくはない。最悪の場合は……もしかしたらリーテンダ王国に居た頃より、もっと辛い環境なるかもしれない。なんていうことはちゃんと考えている。
それでも、私は環境が変わることに期待している。
それに……私は首から下げられているネックレスを手に取る。私の瞳の色と同じ橙色の石がついている。
これは亡きお母様の残してくれた大切なものだ。
『ヘーゼリア。どんな時でも希望を忘れてはいけないわ』
お母様はいつもそう言って笑っていた。穏やかで優しい笑みを私は今でも覚えている。というより、忘れないようにしたいとそう思って何度も思い起こしているというのが正しいかも。
お母様……私は頑張りますから、どうかお空で見守っていてください。
私は馬車に揺られながら、そんな決意をした。
そして長い時間をかけて、私はステリクア王国へとたどり着いた。
*
「ようこそお越しいただきました。ヘーゼリア王女。では、お部屋へ案内しますね」
にこやかな笑みで笑いかけられる。
洗練された動きのその侍女が笑顔を向けてくることに私は驚いた。だって敗戦国の王女――それも私みたいな小さな子相手にこんな風に丁寧にする必要はない。
私の前世の世界には、物語が溢れていた。スマートフォンという便利なアイテムでいつでもそういった物語に触れることが出来て、私はそれを思い起こすと楽しいなとワクワクしていた。
そう言う物語に触れたことと、王女として学んだ知識から横暴な態度をされても当然だったのだ。
それでもこんなにも優しい笑みを浮かべられると、本当に私のことを受け入れてくれようとしているのではないかなんてそんなことも思う。いや、でも侍女としての責務だからとちゃんとしているだけかもしれなくて、内心は分からないけれどね。
「ありがとう。どんな部屋なのか楽しみだわ」
私はなるべく人当たりが良い笑みを浮かべる。折角私に対して笑いかけてくれる人なのだから、味方につけないとね!
私は六歳で、見た目も結構可愛い方なの。お母様は生きていた頃、私のことを可愛いって言ってくれていたわ。お母様が亡くなってから、私を可愛いなんて言う人はいなくなっていたけれど、前世の記憶があるから私は自分が可愛いことを知っているの。
お日様色の髪と瞳。丸々としていて、笑いかけられたら誰でも頷きたくなるはず! 少なくとも余程の事情がなければこんな可愛い私に辛くあたる人なんていないはずだもの。
私の言葉にその年配の侍女は驚いた顔をしていたわ。どうしてなんだろう?
不思議に思いながらも私は侍女についていって、部屋に連れて行ってもらった。
「わぁ、素敵な部屋ね」
部屋の中に足を踏み入れて、私は思わずといったように声を上げた。
だって想像していたよりもずっと豪華だった。私がリーテンダ王国で過ごしていた部屋よりもずっと定例がきちんとされているわ。
もしかして人質の一人一人にこういった部屋を与えているのかしら? ステリクア王国は財源に余裕があるのね。少なくともこれだけの部屋を用意してもらえるのならば、未来は明るい気がする。
これなら少しぐらい欲しいものがあったら言っても問題ないかもしれない。
ああ、でもちゃんと人質として弁える必要はあるけれどね。まずは何処まで私が行動を起こしていいか考えないと。
「国王陛下にお礼をお伝えしたいわ」
「お礼、ですか?」
「そうよ。このような部屋をご用意してくださったんだもの」
私がにっこりと微笑むと、侍女は一瞬なんとも言えない表情をした。発言を間違ってしまったかしら? なるべく嫌な思いをさせないようにと思ったのだけど!
私が不安に思っていると、侍女は次の瞬間にっこりと笑った。
「他の国の方々が集まってからまとめてご挨拶になるかと思います。なのですぐには難しいかと」
「分かったわ。なら、お手紙を書いてもいい?」
こういう感謝の気持ちは早めに伝えた方がいいって、お母様も言っていたもの! 私もね、後から言われると忘れてしまったりするんだよ。だから手紙を書いてみようと思った。
子供が嫌いだとか、人質をどうとも思わないとかそういう人だったら別だけど、こんな部屋をくれる人なら手紙を受け取ってくれるのではないかと思ったの。
「分かりました。お渡ししましょう」
「じゃあ、便箋をもらえたりするかしら?」
当然のことながら持ってきた荷物の中に便箋などはない。私があの国から持ち出せたものなんて最低限だ。おそらく人質たちの中でもかなり荷物が少ないと思う。
私の言葉に侍女は頷いて、一旦部屋から出て行った。
私は一人っきりになって、ほっと一息を吐く。
あの侍女に明確な敵意がない事はなんとなくわかる。本物の悪意を私は知っている。だから私の敵ではないとは思うのだけど、それでもやっぱり一人の方がほっとする。これから先、私はしばらくの間はこの国で過ごす。短くても数年は。そして長ければもっと……。
過ごしやすいようにしなければいけないわ。でも出来るかな。
なんて暗いことを考えてしまって首を思いっきり振った。お母様なら、こんな時に笑っているだろう。そして状況を改善しようとなんとかしたはず。
まずは状況を確認することよね。このような部屋をもらえた段階で悪くはない。
私は何処まで望んでいいんだろうか? 部屋の外に出る許可はどれくらいあるんだろう? 毎日食事を摂らせてもらえたりするんだろうか? 本を読みたいと言ったら読ませてもらえたりする? ……一つ一つ確認していこう。
この国に滞在中に出来る限りのことをする! もし何かがあったとしてもこれから先に役立てるために。
「……お母様なら、きっとそれを望んでくれるはず」
私がぽつりとつぶやいた時、部屋の扉が開く。一瞬びくっとしてしまったけれど、便箋をとりに行ってくれた侍女だった。
その侍女から便箋を受け取ると、私はお礼の言葉をしたためる。文字を書くのはそこまで得意ではない。あんまり書いたことがないから。それでもなるべく丁寧に書く。お礼を書くだけなのに凄く時間が掛かっちゃった。それにあんまり上手じゃない。
一回目に書いたものを思わず丸める。
「捨てるのですか?」
「……上手く書けなかったから」
しゅんとしてそう言えば、侍女は笑った。
「上手く書けていなくても陛下は受け取ってくださいますよ」
そう言われた。本当にそうなのだろうか? なんて思いながらもまた頑張って書いた。次の失敗作はその侍女に渡した。
「あ、ごめんなさい。名前をちゃんと聞いてなかったわね」
「ドリーナと申します」
向こうから名を名乗らなかったのにも何かしらの意味があるのかも。一先ずそのあたりは後々ちゃんと話して知っていけばいいか。
「ドリーナというのね。これからよろしく」
「はい。ただこの国に滞在なさる方々の侍女は日替わりなのでヘーゼリア王女の元に常に控えることはないのですが……」
「ふふっ。そうなのね。でもこれからお世話にはなると思うから、名前を聞けて良かったわ」
日替わりで変わる形ならば、侍女や使用人などの名前を周りの子達は気にしないし、聞かないかも。
私は王族としてはどうなのかと思う暮らしはしていたけれども、仕えてくれる人たちのことを全く気にしない人っているものね。
折角この国で過ごすのだから、私は沢山の人の名前と顔は覚えておきたいな。少なくとも私は自分のことを知ってくれている人の方が嬉しいもん。
「よし、上手く書けたから良かったらこれを陛下に届けてくださる?」
「はい。かしこまりました」
会話をしながら、なんとか一つ、上手く書くことが出来た。まだまだ下手だけれども、この位なら子供だし許されるはず……!
その後、私は同じくこの国にやってきた子供達と挨拶したいなと思ったのだけど、遅い時間帯だから今日は駄目だって言われた。
だからその日はそのままゆっくり眠った。ふかふかのベッドで眠りにつくのは久しぶりだった。