リセッター ~薊~
はじまりの黒百合
【涼天香】
クラスというのには必ずカーストがつきもので、カースト上位の言うことには逆らえない風潮がある。
窓から見える校庭では複数人が走り回っている。まぁ走り回っている全員の髪色が黒ではなく虹のようにカラフルだけど。
(さて、勉強に戻るか・・。)
そう思い、私、「渡辺結花(わたなべゆか)」は机の上に広げた参考書に目を落とした。と、そのとき、後ろの方で水が溢れた音がした。
音の方向を見ると、カースト上位勢の「三津井北斗(みついほくと)」くんと、いじめられっ子の「明智蓮(あけちれん)」くんがいた。
どうやら明智くんに三津井くんがバケツの水をかけたらしい。
「明智、早く水拭けば??笑笑」
見下すような目で明智くんに話しかけた三津井くんはまるで悪魔のようだった。三津井くんの友達がゲラゲラと笑っていてカエルの大合唱のさらに耳障りバージョンが教室に響く。
カースト上位勢の三津井くんは会社が有名な大型スーパなどを営む会社「MITSUI」の息子だ。だから会社の力でいろいろもみ消せるらしい。そのせいか、担任の先生は明智くんのいじめを職員会で上げたけど、「触れてはいけない。」とか言われて、対処できなかったらしい。
三津井くんは青色の髪の毛で顔立ちが整っている。よく告白されているらしいが、許嫁がいるとか何とかで全員振っているらしい。性格は明智くんをいじめている姿を見るとSっ気が混じったボスって感じだ。
一方いじめられっ子の明智くんは、顔は整っていてるし、大人びた雰囲気をまとっている。身長も学力も高い。だけど、その大人びた雰囲気をまとっているのにムカついたのか、入学して2週間くらいでいじめの標的になってしまった。身長は高いくせに運動ができない彼は、ケンカが弱く対抗できないので、あっけなく今もいじめられている。
(いじめなんてしなきゃいいのにな。バカバカしい。)
そう思うけど、私に止める勇気はない。標的が私になるなんて嫌だから。たぶんクラスメートの大半が思っていることだと思う。
誰かの平穏を守るには、誰かの平穏の犠牲があるんだと、このクラスから学んだ。
言われるがまま、びしょ濡れで水びたしの床を雑巾で拭く明智くん。
それを見ている三津井くん、三津井くんの友達のカースト上位勢。
そして、明智くんのことを見て見ぬふりをして、自分の平穏を守りたい私を含むその他のクラスメート。
そんな感じでクラスは構成されていた。
(はぁ‥。受験もっと頑張ればよかった。)
私は元々第1志望だった名門私立高校の「桜鳥高校」に落ちている。私の学力なら絶対受かると過信して、滑り止めも受けていなかった私は、この荒れたマンモス校「白雷高校」の2次募集で入ることになった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「はい、皆さん、席についてー‥。」
教室のドアが空いて担任の明智先生が入ってきた。明智という苗字だが、明智くんとは親族関係ではないらしい。
先生は黒髪でロングヘア。顔は結構整っているし、男子もよく言っているけど身体もだいぶ整っている。男子が言っている風に言うと、「エロい」。胸が、けっこう大きいのだ。
去年新卒で教員になったらしい、23歳。落ち着いていて、冷静な先生。だから、一見クールで近寄りがたいと思っていた。
けど、ある出来事で私の勘違いだったと知る。
入学して4日目くらいの時に配られた、紙に「高校3年間でやりたいこと」を書く欄があった。私は望んできたわけじゃないから、やりたいことなんてなかった。書くことがなくて困っていたので、自分が選んでこの高校に来ていないと知っていた先生に、
「高校でやりたいことがないんですけど、どうすればいいのでしょうか?」と聞いてみた。
近寄りがたいと思っていたから、聞くのはとても緊張した。先生は少し悩んだ末、
「いい大学に行けるように、今ここでほかの人より、勉強する。っていうのはどう??」
と言ってくれた。とてもいいと思い、そのことを速攻で書いて紙を先生に提出した。
「え~っと?”高校生活で期待すること:無し”って・・。ほかの人は”部活で全国いくこと”、”彼女ができること!!”、”インスタ映えすること!!”とか書いてるけど・・」
「こんな学校に期待することなんて、なんもないです。失礼ですけど、ここバカ学校じゃないですか。」
「まぁ、そうだけど、この高校生活は、絶対いいこと、あるよ。」
「えぇ・・。ほんとですか・・?」
「ぜったいある。先生が言うんだから、間違いないよ。」
「そうだといいですけどね~。」
そんな会話をした気がする。そこから少しずつ仲良くなって、
「明智くんのことを言ったら「触れてはいけない。」とか言われて、対処できないんだよね。だからしばらく明智くんには耐えてもらわないといけないなぁー・・。」
ってのを聞いたんだっけ。懐かしいな・・。
「じゃあ出席をー・・」
「せんせぇ~!下着透けててエロいで~すwwwそれともこのクラスの貧乳の女子たちに見せつけてますかぁ?」
この気持ち悪い発言をしたのは三津井くんの友達の「霧矢龍之介(きりやりゅうのすけ)」くんだ。
顔にそばかすがあり、髪はパーマがかかった茶髪。
三津井くんの友達のグループ、通称「三津井グループ」の中ではおちゃらけ担当だ。いつもこの時間になると「胸がでかい」ことを毎日毎日言い続けている。
(今日もキモ・・・。てか先生下着透けてないし・・。)
明智先生はこの発言にいつも「霧矢くん、静かにしてください。」と言って出席確認をしている。
「・・・・。えっと、明智くん~」
「・・ーはい。」
「今治さん・・」
「は~い」
「植田さん・・」
「はい。」
(珍しい・・。)
本当に懲りないなってほど毎回「静かにしましょう」って言っていたのに、無視して進めるなんて。どうしたんだろう。ついにめんどくさくなったとか?まぁいいか。
今日も何もなく、平和に過ごせれば。先生に言われた通り、大学でいい青春を送るために、いまから私は頑張っていかないと。
私が心の中でいろいろ考えているうちにホームルームは終わった。
そして今日もなんとなーく過ごし、下校時刻になった。
クラスというのには必ずカーストがつきもので、カースト上位の言うことには逆らえない風潮がある。
窓から見える校庭では複数人が走り回っている。まぁ走り回っている全員の髪色が黒ではなく虹のようにカラフルだけど。
(さて、勉強に戻るか・・。)
そう思い、私、「渡辺結花(わたなべゆか)」は机の上に広げた参考書に目を落とした。と、そのとき、後ろの方で水が溢れた音がした。
音の方向を見ると、カースト上位勢の「三津井北斗(みついほくと)」くんと、いじめられっ子の「明智蓮(あけちれん)」くんがいた。
どうやら明智くんに三津井くんがバケツの水をかけたらしい。
「明智、早く水拭けば??笑笑」
見下すような目で明智くんに話しかけた三津井くんはまるで悪魔のようだった。三津井くんの友達がゲラゲラと笑っていてカエルの大合唱のさらに耳障りバージョンが教室に響く。
カースト上位勢の三津井くんは会社が有名な大型スーパなどを営む会社「MITSUI」の息子だ。だから会社の力でいろいろもみ消せるらしい。そのせいか、担任の先生は明智くんのいじめを職員会で上げたけど、「触れてはいけない。」とか言われて、対処できなかったらしい。
三津井くんは青色の髪の毛で顔立ちが整っている。よく告白されているらしいが、許嫁がいるとか何とかで全員振っているらしい。性格は明智くんをいじめている姿を見るとSっ気が混じったボスって感じだ。
一方いじめられっ子の明智くんは、顔は整っていてるし、大人びた雰囲気をまとっている。身長も学力も高い。だけど、その大人びた雰囲気をまとっているのにムカついたのか、入学して2週間くらいでいじめの標的になってしまった。身長は高いくせに運動ができない彼は、ケンカが弱く対抗できないので、あっけなく今もいじめられている。
(いじめなんてしなきゃいいのにな。バカバカしい。)
そう思うけど、私に止める勇気はない。標的が私になるなんて嫌だから。たぶんクラスメートの大半が思っていることだと思う。
誰かの平穏を守るには、誰かの平穏の犠牲があるんだと、このクラスから学んだ。
言われるがまま、びしょ濡れで水びたしの床を雑巾で拭く明智くん。
それを見ている三津井くん、三津井くんの友達のカースト上位勢。
そして、明智くんのことを見て見ぬふりをして、自分の平穏を守りたい私を含むその他のクラスメート。
そんな感じでクラスは構成されていた。
(はぁ‥。受験もっと頑張ればよかった。)
私は元々第1志望だった名門私立高校の「桜鳥高校」に落ちている。私の学力なら絶対受かると過信して、滑り止めも受けていなかった私は、この荒れたマンモス校「白雷高校」の2次募集で入ることになった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「はい、皆さん、席についてー‥。」
教室のドアが空いて担任の明智先生が入ってきた。明智という苗字だが、明智くんとは親族関係ではないらしい。
先生は黒髪でロングヘア。顔は結構整っているし、男子もよく言っているけど身体もだいぶ整っている。男子が言っている風に言うと、「エロい」。胸が、けっこう大きいのだ。
去年新卒で教員になったらしい、23歳。落ち着いていて、冷静な先生。だから、一見クールで近寄りがたいと思っていた。
けど、ある出来事で私の勘違いだったと知る。
入学して4日目くらいの時に配られた、紙に「高校3年間でやりたいこと」を書く欄があった。私は望んできたわけじゃないから、やりたいことなんてなかった。書くことがなくて困っていたので、自分が選んでこの高校に来ていないと知っていた先生に、
「高校でやりたいことがないんですけど、どうすればいいのでしょうか?」と聞いてみた。
近寄りがたいと思っていたから、聞くのはとても緊張した。先生は少し悩んだ末、
「いい大学に行けるように、今ここでほかの人より、勉強する。っていうのはどう??」
と言ってくれた。とてもいいと思い、そのことを速攻で書いて紙を先生に提出した。
「え~っと?”高校生活で期待すること:無し”って・・。ほかの人は”部活で全国いくこと”、”彼女ができること!!”、”インスタ映えすること!!”とか書いてるけど・・」
「こんな学校に期待することなんて、なんもないです。失礼ですけど、ここバカ学校じゃないですか。」
「まぁ、そうだけど、この高校生活は、絶対いいこと、あるよ。」
「えぇ・・。ほんとですか・・?」
「ぜったいある。先生が言うんだから、間違いないよ。」
「そうだといいですけどね~。」
そんな会話をした気がする。そこから少しずつ仲良くなって、
「明智くんのことを言ったら「触れてはいけない。」とか言われて、対処できないんだよね。だからしばらく明智くんには耐えてもらわないといけないなぁー・・。」
ってのを聞いたんだっけ。懐かしいな・・。
「じゃあ出席をー・・」
「せんせぇ~!下着透けててエロいで~すwwwそれともこのクラスの貧乳の女子たちに見せつけてますかぁ?」
この気持ち悪い発言をしたのは三津井くんの友達の「霧矢龍之介(きりやりゅうのすけ)」くんだ。
顔にそばかすがあり、髪はパーマがかかった茶髪。
三津井くんの友達のグループ、通称「三津井グループ」の中ではおちゃらけ担当だ。いつもこの時間になると「胸がでかい」ことを毎日毎日言い続けている。
(今日もキモ・・・。てか先生下着透けてないし・・。)
明智先生はこの発言にいつも「霧矢くん、静かにしてください。」と言って出席確認をしている。
「・・・・。えっと、明智くん~」
「・・ーはい。」
「今治さん・・」
「は~い」
「植田さん・・」
「はい。」
(珍しい・・。)
本当に懲りないなってほど毎回「静かにしましょう」って言っていたのに、無視して進めるなんて。どうしたんだろう。ついにめんどくさくなったとか?まぁいいか。
今日も何もなく、平和に過ごせれば。先生に言われた通り、大学でいい青春を送るために、いまから私は頑張っていかないと。
私が心の中でいろいろ考えているうちにホームルームは終わった。
そして今日もなんとなーく過ごし、下校時刻になった。