転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
 この世界では、ジャパリス国から輸入された悪役令嬢小説がなぜか流行っている。ゲーム制作者の遊び心だろう。ゲームの序盤でラビッツはルリアンにみみっちい嫌がらせをするので、小説になぞらえて「悪役令嬢」とみんなに言われてしまう。オープニングでは名前の上に『ツンデレ悪役令嬢』という異名が書かれていた。

 まだ学園生活は始まっていないので、それを知っているのは俺だけだ。

 今の俺はゲームとは違う。ゲームのラビッツルートのように、二人のキューピッドになるつもりはない。

 どうにか転生デビューを果たし、ラビッツの心を俺に向けてみせる……!

「陰キャの俺には厳しいぜ……」
「昔の威勢はどうしたんだよ」
「俺様はナイーブなんだ」
「しばらく見ない間に、小さい男になっちまったなぁ」
「平均身長だよ!」

 正直、ラビッツの婚約者であることを除けば、モブがよかった気持ちもある。王子という身分はメンタル面でもハードルが高い。半年間の訓練で様にはなってきたものの、楽じゃない。

 しかし!
 誰も俺を知らない世界でやり直しができるのは大きい!

「相変わらずのバカ王子っぷりね、ニコラ。リューク様もお変わりなさそうで」

 来ったぁぁぁ!!
 悪役令嬢、ラビッツ・ロマンシカ!

 薔薇を形どったバレッタでサイドの髪を後ろで留めている。ゲームと同じく鮮やかなレッドブラウンの髪だ。ここでもバレッタから兎耳が生えているのはギャルゲー仕様だろう。

 俺たち三人は幼馴染。ずっと仲よしではあるものの、俺とラビッツが婚約中で、ラビッツはリュークに恋をしているというなんともいえない三角関係だ。

「久しぶりだな。俺とリュークで扱いが違わないか?」
「あなたにはこれでいいでしょう。わざわざ丁寧にする必要ある?」
「婚約者なのに?」
「だからでしょう。私だって、婚約者じゃなかったらもっと敬意を払っているわよ」
「ひっでーなー」

 前世でこんなに口の悪い貴族は創作ですらなかなかないだろうが……ここはギャルゲーの世界。制作者の趣味の世界だ。思う存分、ツンツンを味わえる。

「未だにプライベートでは言葉遣いが悪いのね」
「公私混同はよくねーよ」
「ふん。バカ王子!」

 よし、いつも通りの会話だ。しばらくラビッツとも会っていなかったからな。挙動不審にならず、記憶の通りに振る舞えてよかった。ラビッツもツンツンしてくれている。

 ……でもな。

 デレも見たい!
 生でデレも見たいんだよ!

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