転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
 気を取り直して、次は精神高揚……ん、これは少しまずいんじゃないか? わずかに意欲は湧くが、さっきの眠気との合わせ技で、なんだか気分がおかしい……。毒消しでどうにかならないか。……駄目か。さすがに毒ではないらしい。となると、毒消しの効果は確かめようがないな。これを作った奴は、妙に疑い深い男なのかもしれない。それならチャンポンなど飲むな、という話だが。

 魔法効果増幅はさすがにやめておこう。

 残りは二つだ。一つを少しだけ……あ、やはり酩酊か? まずいな。これまでの合わせ技のせいで、普段以上に警戒心がなくなってついグビッと飲んでしまう。まぁ、効果はすぐに消えるだろうが。

 となると、正体不明の残り一つが気になるな……。

「ニコラぁ。これ、変な気分になるー。ふわふわー」

 アホか、ラビッツ!
 何を飲んでるんだ!
 効果を探るのに集中して、目をつむっていたばっかりに気づかなかった!

「飲んじゃ駄目だろ!」
「だってニコラも飲んでたし、私も報告書? の下書きの手伝いくらいはできるかもと思ったし」
「気持ちは嬉しいが駄目だ」
「さっきの、美味しかったもん」

 ハロルドくんが飲まなかった葉っぱ入りのチャンポンが半分もなくなってる! そんなアホな奴じゃなかっただろう! ピッチャーの方ならすぐに効果が抜けるのに!

 薬の効果は人による。効きやすい体質の者には、てきめんに効く。俺は多少の耐性訓練を積んでいるが……。ラビッツは、最初に飲んだ美味い水で警戒心が薄れ、チャンポンの入った紙コップにまで手を出してしまったのかもしれない。

「とりあえず、そこのソファで休め。俺がここを片付けるから」
「はーい」

 ラビッツはてくてくとソファへ歩いていき、その上で丸まった。

 まずいぞ。まずは証拠隠滅だ! 幸い、流し台もある。潰された植物は小さな瓶に詰めて、蓋をする。あとで提出するためにポケットに入れとこう。紙コップは洗ってゴミ箱へ。ピッチャーも、まとめて洗っておこう。

 一通り片付けて、残ったのは正体不明の最後の一種類と、ハロルドくんが残したチャンポンだ。どうするか。とりあえず正体不明のものをわずかに飲んでみる……ん、体がかすかにポカポカするな。いや、待てよ。この感覚は……。

 見当がついたので、そのピッチャーの中身も捨てて洗う。わざわざ残しておく必要もない。葉も入っていないし、効果はもっても三十分程度で消えるだろう。

 あとは、このチャンポンか……。ハロルドくん以外は全員飲み干したようだ。これだけは飲まずに証拠として確保しようかとも思ったが……ラビッツに飲まれて減ってしまっているしな。

 一度口をつけたものは検査に向かない。なんの処理も施していないし、葉の付着はあるもののもって一日。炭酸のように少しずつ抜けていく。飲んだ場合の人への効果は、数時間程度だろう。少し試して、とっとと捨てよう。

「飲むのぉ?」

 ふらふらとラビッツが寄ってきた。

「ここではまずい。寮に持ち帰って少しだけ試してみようかと」

 黒子に止められる可能性もあるけどな。

 さて、ラビッツをこのままにはしておけない。しばらくここに隠れてもらって、俺だけで軽食を二人分買ってこよう。それを一緒に食べて、ラビッツの薬の効果が抜けてから寮へ送るか。

「ここではまずいの? じゃ、私の部屋ならいいんじゃない?」
「へ?」

 ラビッツは紙コップと俺の腕を掴み――、気づいたら女子寮の彼女の部屋にいた。

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