転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「いや、いいよ。台車競争は楽しそうだったしね。もし台車が無事なら……ベルジェ嬢を乗せてあげたいんだ」
「え?」

 ひっそりと遊ぼうかと思ったけど、言っちゃうか。

「君たちが楽しそうなのを羨ましそうな顔で見ていたからさ。もちろん魔法は使わないけどね。ベル子は体質の問題と家が複雑で……おっと、勝手に言ってはいけないな。ただ、剣術科でのやり取りを見たのなら、察することはできるだろう?」
「あ……」
「学園でくらい、楽しい思い出をつくってほしい。台車で遊ぶかもしれないことは、内緒にしておいてくれ。これで共犯者だ」

 ヒロインたちは皆、楽しい思い出を学園生活に求めている。数々のイベントで、俺はそれを知っているからな。
 
 さて、これが吉と出るか凶と出るか。

 剣術科でのイベントに俺は絡めない。リューク以外にもベル子の味方が増えれば、もう少し――。

 オリヴィアが一歩前に出た。長い金の髪が微かに揺れ、上に立つ者らしいその瞳が、生徒たち一人ひとりを見渡した。

「そうね。ベル子さんは私たちにとって大事な仲間。何かあれば教えてちょうだいね」

 その言葉を受けて、ラビッツも一歩踏み出した。少し頬を赤らめながらも、真っ直ぐに声を発する。

「わ、私にとっても大事な友達よ。何かあったら守ってあげて。でも、お姉さんにも事情があるはずで……配慮もお願いするわ」

 姉にも事情がある。それを知ってるからな、ラビッツは。

「ベル子は俺たちの大切な友人で仲間だ。よろしく頼む」

 あらためてお願いをする。
 その時――。

「そ、そんなふうに言われると、恥ずかしい」

 控えめな、小さな声が背後から届いた。全員の視線が一斉にその方角へ向かう。そこには、既に戻ってきていたベル子とルリアン、そしてリュークの姿があった。怪我一つない、吹っ飛んでいったレース参加者と台車も一緒だ。

 ベル子は先ほどの凛とした姿とは違い、頬がわずかに紅潮している。

「でも……ありがとう」

 かぁっと赤みを差した顔で戸惑うように目をあちこちにやる。小さくこぼれたその声に、場の空気がより和んだ。

 やっぱり可愛いな!

 
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