友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果

1・私が部下と、友情結婚？

『菫(すみれ)はいつになったら、結婚するの？』

　女性の幸せは、結婚して子どもを産むこと。

　私はそうやって、何度も言い聞かせられて過ごしてきた。
　だけど、白馬に乗った王子様はいつまで経っても迎えに来てくれないし、誰かを好きになる気持ちは芽生えない。
　そんな状況で異性と無理やり付き合ったところで、時間の無駄だとしか思えなかった。

「もう。お母さんったら……。また、それ？　恋なんてしている暇、私にはないよ」

　今日だって、そう。
　9時に出社して17時に退社なんて、規則正しい生活をファッション雑誌の編集者には無理。
　月刊誌が発売され続ける限り、毎月のように締め切りが追いかけてくるんだから。
　倒しても、倒しても、終わりがない。
　まるで蟻地獄に嵌ったかのようだった。

　自宅に帰る暇さえあれば少しでも余裕を持って原稿を仕上げたいと思うほど、時間に追われている。
　そんな状態でプライベートを充実させられるほど、自分は器用ではなかった。

『菫は昔から、恋より勉強に全力だもの。それが、仕事に変わっただけなんでしょうけれど……』

　学生時代は母親の言葉を真に受けて、「運命の相手と釣り合う女性になるんだ」勝手に意気込み、勉学に明け暮れたものだ。