友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 しかし、それらは社会や男女恋愛の場において、なんの役にも立たなかった。
 山程資格を取って成績が上位になったところで、異性からしてみれば魅力的な女性とは思われないからだ。
 それに気づいた時にはもう、同年代の男性達と出会う機会は失われていて……。
 私は完全に、結婚のタイミングを逃していた。

「今さら生き方を変えるなんて、無理だもん。お姉ちゃんが結婚してくれただけ、いいと思ってほしいな……」

 恋より仕事を取った娘にどうしても結婚してほしい両親は、毎日のように「あの男性はどうだ」と釣り書を送ってくる。
 だが、それらへ真面目に目を通してお見合いをする気になど、到底なれなかった。

 ――私はもう、1人で生きていくって決めたから。

 ああ、さっさと諦めてくれないかな。
 うんざりとした声音を隠すことなく、スピーカー越しに母へ告げる。

「お姉ちゃんには私の代わりに、旦那さんと円満な夫婦生活を続けてほしいと思ってるよ」
『でもねぇ……。ほら、姉夫婦は子どもが望めないし……』
「私が結婚したって、絶対子宝に恵まれる保証はないよ? 不妊の原因は、女性だけじゃないもん」
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