友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「ディレクターさん! あのね、ちょっといいかなぁ?」

 すると、外に出たところでカメラマンに呼び止められた。
 隣には、目指し帽を深く被って表情が見えないモデルの姿もある。

 2人揃って、一体どうしたんだろう……? 

 蛍くんはまるで不審者を見るような目で彼らを凝視している。
 それを宥めつつ、入口を房府塞ぐように立ち止まって話を聞く体制を生み出した。

「どうしたの?」
「お仕事の相談じゃ、ないんだけど……」
「プライベートなことでしたら、俺を通してください」
「いいの? 内緒話しなきゃいけない奴だよ?」

 2人は目を合わせた瞬間に、バチバチと火花を散らす。
 突如一触触発な雰囲気になるなど思いもせず、反応が遅れてしまった。

 止めなくて、いいのかなぁ……?

 私は彼女と仲がよさそうなモデルの男性に視線を移した。
 しかし、彼は近隣の道路をのんびり歩く白猫に夢中なようだ。
 まったく言い争いを気にする様子がない。

 私は仕方なく、2人の間に割って入った。
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