友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「う、ん……」
「そっかー。それで、余計に袋小路に嵌っちゃったんだー」

 私は彼に、別れを切り出されるのが怖いのだ。
 この関係の終わりが来る時は、自分から伝えたい。
 そのほうが、傷つかなくて済むから。

「あのね。絶対、莉子達と同じように、ならなきゃいけないってわけじゃないんだよ。もっと、別の方法があるかもしれないし……」

 私はいつだって苦しみながら、思い悩んで正解を探している。
 莉子ちゃんの経験を模範解答だと勝手に解釈してなぞるなんて、絶対にやってはいけない。

「莉子ができるのは、ディレクターさんに寄り添って、同じ苦しみを味わった先輩としての体験談を教えることだけ。それを聞いてどうするかは、夫婦が相談して決めることだもん」

 一方的に彼の気持ちを決めつけ、こうしたほうがいいと間違った方向へ進んでいくのが一番最悪なパターンだ。
 莉子ちゃんは私に、それを教えてくれている。
< 110 / 238 >

この作品をシェア

pagetop