友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「気にしないで。たろーちゃんとディレクターさんを、交換するだけだから!」
「それって……?」
「まずは、事情聴取から始めなくちゃ!」

 私はリビングに案内され、期待を込めた表情でこちらを見つめる莉子ちゃんと無表情を貫き続ける九尾くんに見守られながら、ここに至るまでの経緯を説明した。

「うーん。話を聞く限りでは、旦那様に勘違いされてるよね」
「何を……?」
「友情結婚だって約束したのに、自分を好きになってほしいってアピールしているように見える。それが、ひどい裏切りのように感じて、怒ったんじゃないかな?」
「やっぱり、我慢しているべきだったんだ……」
「うんん! それは違うよ! 長年本音を隠して生活するよりは、さっさと打ち明けたほうが関係は長続きするはずだもん。ディレクターさんの選択は正しいよ!」

 莉子ちゃんは力説してくれたけど、どうしても不安が拭えない。
 浮かない反応をするこちらの様子を見かね、今まで口を挟むことなくじっと聞き耳を立てていた旦那さんが頷き、同意を示してくれた。

「どう考えても、あいつが悪い」
「そう、かな……」
「好きになってほしくないなら、はっきり言えばよかった。それだけの話だ」
「好き……?」
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